企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
社長力
2025年6月号
社長の器以上の人財は現れない

社長力とは「人財育成力」です。どういう人財を育成すべきかという理念を示し、人間性に富んだハイパフォーマーを育成することは、社長・幹部の義務です。人づくりは社長の最大の任務です。
「学習する組織」をつくるリーダーシップ
社長力とは組織の理念を語り実践する力です。使命観、事業目的を明確にして、それを企業文化にまで高め、お客様へ貢献する力です。一過性の気分ではなく、業務とのつながりを持たせ、仕組み化することも重要です。
中堅企業や中小企業の活性化を目的に、人と企業の成功づくりを行うなかで感じるのは、やはり、企業の盛衰は社長やそれを支える経営陣(トップマネジメント)の力量や内なる志にかかっているということです。人間力・考える力・仕事力・感謝力が根底にあること、経営陣の実行力ほど、社員さんを鼓舞するものはありません。若者は冷静に見ています。
グローバルな時代となった今、過去に貢献した人の年功は考慮しながらも、経営陣が理念体系を具体的に形にしようと努力することが求められます。①理念に基づいた部下育成スキルが高い、②自らが模範となる、③チームスピリットが高い、といった上司がいれば、組織全体から信頼を得られます。
そのために、一つは会社が「学習する組織」になっているかどうかが重要です。やったりやらなかったりの会社は、一貫性の無さを現場の人たちが見て、経営陣を揶揄しているはずです。モチベーションもコミットメントも生まれるわけはありません。
社長力とは、経営陣を理念に向かわせる力のことです。「学習する組織」をつくるリーダーシップが求められているのです。
学習時間と効果が表れる関係性を知る
「学習する組織」をつくろうと、理念体系の浸透を図っても、すぐに効果は上がりません。たゆまぬ努力と一定の時間が要ると理解することも大切です。それも社長力です。
繰り返し学ばなければ、「長期記憶」となりません。ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスが提唱した「忘却曲線」(学習後の時間経過に伴い、人間が「忘れる」ことに着目したメカニズムで、人は一度学習した内容を時間の経過とともに忘れていく)を把握しておく必要があります。経営陣は知識が不可欠であり、その知識を活用して生産性を上げ、収益性と成長性を高めることが喫緊の課題です。ピーター・ドラッカー博士は、知識労働者の継続学習の必要性に触れています。
また、S字状をした「シグモイド曲線」という成長曲線があります。横軸に「学習時間」を置き、縦軸にその効果を示すものです。学習初期は、ほとんど効果は出ませんが、学習量が一定に達するとその効果が急速に大きくなります。〝経営の神様〟といわれる松下幸之助翁は、このシグモイド曲線に近い、ご自身のお考えを次のように松下電送の元社長、木野親之氏に述べられたそうです。
「君なあ、勉強してもすぐに効果が出るほど甘くはないんやでぇ。最初は何の役にも立たんように思うもんや。しかしなあ、いっこうに成長の効果は生まれんようにみえるけど、あきらめずに続けていると、ある一瞬から、ぽん! と、ワンステップ学習効果が生まれるんや」
経営の神様らしく、人間の本質を知りつくされていたのです。人づくりの神様ともいわれる所以です。人財育成は社長の一念で決まります。
本記事は、月刊『理念と経営』2025年6月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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