企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
社長力
2025年5月号
マネジメントには三つの役割がある

社長力とは、自社独自の使命や目的を問い、ゴールを具体的に示し、仕事を通して働く人たちを生かし、望ましい結果をもたらすために行動する力のことです。マネジメントが問われています。
成果を創り出し、働く喜びを生み出す
〝マネジメントの父〟ドラッカー博士は一九七八(昭和53)年一〇月、神戸の国際会館での講演の際、「経営者には、成果を創り出すことと、働く人の喜びを生み出すことの二つの役割がある。ただ、働く人の喜びを実現しても成果が得られなければ失敗であり、成果を創っても働く人に喜びがなければ失敗である」と話されたことを、私は鮮烈に覚えています。まさに、成果と働く人の喜びの両面を生み出すのがマネジメントなのです。
企業の命題は「永続」です。だからこそ「マネジメントするということは、単なる受動的、適応的な行動ではない。望ましい結果をもたらすために行動することである」と述べられているのです。そして、マネジメントの原理として、「あらゆる意思決定と行動において、経済的な成果を第一義とする。企業のマネジメントは、経済的な成果をあげることによって、その存在と権威が正当化される」と断言されています。
「マネジメントにとっての第一の機能は、事業のマネジメントであり、①その事業が経済的な成果をあげられないならば、マネジメントは失敗である。②消費者が進んで支払うお金で、望む財やサービスを提供できなければ失敗である。③自らに託された経済的資源を使って、その資源の富を創出する能力を増大させるか、維持できなければ失敗である」と、実に手厳しくマネジメントの定義をされています。
社長には、今後自社をどうマネジメントするかが問われており、成果を創ってこそ、顧客や社会の問題・課題解決の役割を果たす社会の一機関となりうる資格が生まれるのです。
スターバックスのシュルツ氏の役割
また、ドラッカー博士は、マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させる上で三つの役割があると述べています。一つは「自らの組織に特有の使命を果たすこと」。二つ目は「仕事を通じて働く人たちを生かすこと」。三つ目は「自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題解決に貢献すること」です。これらの役割を満たすべく社長力が試されているのです。
それらの三つの役割を満たしたのが、スターバックスのハワード・シュルツ氏です。動画学習ツール「グロースカレッジ」では、スターバックスに関して三〇回にわたって創業期以前から現在までをお伝えしていますが、ハワード・シュルツ氏には直接質問しました。スターバックスは物まねではない「特有のミッション」を描き、創業当初から次の三点にこだわった経営をしています。
一杯のコーヒーを笑顔でお出しし、職場でもない自宅でもない第三の場所(サードプレイス)を提供して顧客の満足を創造しているのです。ハワード・シュルツ氏は、貢献と時間を考えてトップマネジメント層を育成していく方法をとるのではなく、最初から「その道のプロ」としてビジョンを語り共感を得た人を選び、その上でそれぞれの強みや専門性を持った人に役割を一任したのです。ハワード・シュルツ氏は自分の強みである「起業家精神」を生かして、店舗のコンセプトづくりや出店戦略を担当し、驚くほどの急成長を実現させました。
また、自社独自のミッション実現のために、スターバックスのコンセプト作りにふさわしい価値観を持った人財の募集策をとりました。そのためには、百貨店並みの給料を出さなければならないと、創業前から考えていたのです。
トップマネジメントは「戦略的な意思決定ができる人」を創業期から配置し、その人の強みを最大限に生かして、成果を創り出す人のことです。
本記事は、月刊『理念と経営』2025年5月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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