企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

リーダーは逃げてはならない

社長とは、自社のビジョンやミッションを語り、目標を実現して、一人でも多くの人に貢献する志を持った人のことです。その実現のために必要なスキルの一つがリーダーシップ、つまり対人関係影響力です。ここで重要なのはドラッカー博士が言われる「真摯さ」です。

リーダーシップは実践の意味を含む

 優れた社長には、「人間は誰もがリーダーになる資質を持っている」という確信があります。おそらく自らを顧みて、自分も社長になれたのだからという、謙虚さがあるからです。

 では、誰もが本当に社長になれるのでしょうか。赤字を計上しても何ら手も打たず、具体的な解決策も実践もせず手をこまねいている方々もいます。現在一万円札の顔になっている渋沢栄一翁の『論語と算盤』の意味が把握できていないのです。道徳に加えて、経済感覚がなければ、社会や企業、働く人を守ることはできません。

 道徳と経済を統合させ、他社にはない顧客価値を生み出し、収益を上げ、人材を育成する力が「社長のリーダーシップ」です。時代に応じて「社長・幹部・社員」のリーダー論は多岐にわたり進化してきました。

 社長は組織においてあらゆることの牽引役です。ゴールを示し、ビジョンを共有する仲間意識を生み出し、人手が足りないときには腕まくりして現場を支援します。社長は絶えずハードワークをしながら、気の抜けない立場で、リーダーシップを必要とされています。

 この三位一体論で長い時間をかけて述べているのは、社長力・管理力・現場力、それぞれの立場での対人関係影響力の発揮度についてです。三者がお互いに足らざるを補い合い、相乗効果を発揮し合うことがリーダーシップです。

リーダーの基本を貫きソニーを再生

 ソニーの前身である東京通信工業は、井深大氏と盛田昭夫氏の二人の創業者によるリーダーシップで、戦後の焼け野原から〝世界のソニー〟として日本を代表する企業になりました。しかし、二〇一一(平成23)年度は売り上げ六兆四九三一億円、株主に帰属する当期純利益はマイナス四五五〇億円という惨憺たる業績でした。

 しかし、当時の副社長だった平井一夫氏が、翌一二年に社長兼CEOになり、六年の歳月を経た一七(同29)年度には、売り上げ八兆五四四〇億円、連結営業利益は七三四八億円、当期純利益は四九〇八億円に急回復したのです。二〇年ぶりの最高益更新でした。

 平井氏は著書『ソニー再生』(日本経済新聞出版社)で、「自信を喪失し、実力を発揮できなくなった社員たちの心の奥底に隠された『情熱のマグマ』を解き放ち、チームとしての力を最大限引き出すこと。ある意味、リーダーの基本ともいえるようなことを愚直にやり通してきたことが組織の再生につながった」と述べています。

 平井氏は入社当時、出世競争にまったく興味がなく、「会社への貢献は、肩書でするものでもない」という思いをお持ちで、好きな音楽を仕事にしたいと、CBS・ソニーの門を叩いたそうです。

 しかし、三〇代半ばに試練が訪れます。アメリカのプレイステーション事業に駆り出され、そのままサンフランシスコ郊外のソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカ(SCEA)に出向することになりました。そこで三五歳でトップになります。

本記事は、月刊『理念と経営』2025年2月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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