企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

社会から受けた 恩恵に気づいているか

企業は自社の努力だけでは成功しません。自分の天与の才能や努力で勝ち取ったものでも、見えない多くの支援を受けています。社会の恩恵、公共のインフラ、お客様のご支援、働く人の努力などです。社長力とは感謝力であり、多くの恩恵に報いるのが企業経営です。

会社は、社会の問題を解決する一機関

 人間は貢献意欲を本能として持っています。ヒト属のネアンデルタール人は屈強だったのに、なぜ絶滅したのか。われわれの祖先であるホモ・サピエンスは弱い存在だったにもかかわらず、なぜ今、八十数億もの人間が生息することができているのか。

 理由は、われわれの祖先は、自分たちを「弱いもの」と認識し、弱さを補完し合う集落をつくり、貢献し合い、助け合うことによって成長発展しつつ現在をつくりあげてきたからです。諍いも幾度となく起こしました。しかし、生存の危機を乗り越えることができたのは、ホモ・サピエンス(ラテン語で「賢い人」の意味)という名前の通り、智恵を最大限活かしてきたからです。「永続が命題」の企業経営にもまったく同じことが言えます。

 会社は、ドラッカー博士が言うように、社会にある問題・課題を解決する一機関です。問題を解決できない企業は存続できません。

 伸びている企業には、感謝力を持った人たちが多く集まっています。顧客や社会から受けている恩恵に気づいている企業は、自社の事業を通してその恩恵に報いる実践をしています。

 アメリカの哲学者、ラルフ・エマーソンは、著作で「最も多くの恩恵をほどこす人こそ偉大なのだ。恩恵を受けながら自分では何も恩恵を与えない人こそ卑劣なのだ」と述べ、恩恵に報いた分、必ず受け取る仕組みが「天の理法」だと断言しています。

「顧客ファースト」の企業文化をつくれ

 蒔かぬ種は生えません。商品開発に挑み、人財育成を強化し、イノベーションを起こし、受けている恩恵以上のものを世に送り出し、それが多くの人の役に立つように努力して創造するのが社長の任務です。自社が受けている恩恵に感謝し、その恩恵に報いる企業文化を育てることを社長力といいます。
 
 エマーソンは、与えた分受け取ることができるのが「天の理法」だと述べますが、今以上に努力するのだという意識の強い人が自社で育っているかいないかで、企業の盛衰は決まります。

 例えば、感謝の気持ちを伝えるための「ありがとうカード」の活用、小誌主催の「心に残る、ありがとう!」体験談をそれぞれが書いて発表する、自社内に「目標実現アンバサダー」を育成するといった、働く人の感謝力に火をつける行事制度の設計などは、社長の重要な役割です。

 顧客や社員のエンゲージメントを上げるには、現場の感謝力を上げなければいけません。「ありがとう」の数を増やした分、業績も好転し、感謝力の強い企業文化が育まれます。

 新商品などの告知に始まり、受注、アフターフォローまでのおもてなしや気配りによって、顧客をホッとさせ、「あなたの会社と取引してよかった」と言ってもらえてこそ、顧客価値は高まります。社長力とは、そのビジネスモデルをつくる力であり、全社員に「顧客ファースト」の企業文化を浸透させる力です。感謝力を持った幹部や社員育成力の高い企業しか、顧客は相手にしてくれません。

本記事は、月刊『理念と経営』2024年12月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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