企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
社長力
2024年10月号
「気づく力」は予期せぬ発想を生み出す
社長力とは立派な会社にしていくための「考える力」のことで、新しい発想力を持つことです。企業経営では良いことだけでなく、悪いことも起きます。日々、ベストな状況判断と決断を迫られており、日頃から情報を蓄え、深く考える力を鍛えておくことが必要です。
五感が「思い」を生じさせる
人間は早くて三歳、遅くとも四歳で四〇〇語近い言葉を覚えます。言葉の意味することを幾重にも結び、左脳の働きによって考えることを始めます。当然、生まれてからしばらくは本能が司る形で、直観的な感覚が働いていると推察できます。
しかし、日常の経営を行う際の「思考」とは、「思い」と「考え」の二種類の意味を含み、悪く思うと、連鎖的に悪く考えます。「思う・感じる」は右脳の働きです。それを契機に左脳は具体化したり、観察、推察、洞察して、体系化し、理論化して考えます。
人間には目や耳、鼻、舌、皮膚の五つの感覚器官があり、それらが働いて外界の刺激を五種類の感覚として思いを生じさせます。われわれは、仕事をする上で外の世界から否応なく情報を受け取り、その度にその情報から感覚器官が思いを生じさせ、言語を通して「考え」となり、意味をつくり出し、判断して意思決定します。
例えば、自己中心的な思いを断てば素直な考えになり、孔子が唱えた五常(仁義礼知信)が働いて「人間力」となります。仕事や人間関係の上でもとても大切です。人間力(右脳)と考える力(左脳)が脳梁を通して結び合えば、まさに〝鬼に金棒〟です。
人はさまざまな思いを持ちます。自分は周囲や相手にどんな思いや考えを持った人間なのか、素直に問いかけてみましょう。なぜなら、それがあなたの考え方を決めるからです。
思いが考え方や行動に連鎖し、結果となる
自分の体験を思い出してみてください。上司に叱られたとします。誰も喜ぶ人はいません。そのときにどういう思いを抱いたかに気づき、己を新たにすれば人間力は身につきます。自分の思いを省み、考え方を少しでも改めていけば、態度が変わり、取り組む姿勢が前向きになり、仕事が楽しくなり、お客様に好感を持たれ、良い結果をつくり出します。つまり、人間力を高めると、良い考え方の人と尊敬されます。思いは人間力であり、良い考え方が良い行いの源泉になるのです。
しかし、人間は聖人君子ではありません。カチンときたり、怒りが生じたりします。人間は自らを延命するために、本能的な思いが出てくるのです。ただ、カチンときたままでは、間違いなく考え方はマイナスになります。思いが悪いと、悪い原因が次に悪い考えをつくり、悪い考えが行動になり、相手との関係性を歪め、職場に悪い雰囲気をつくり、最後は業績悪化を生み出します。
このときに社長力が試されます。社長力とは「自分の思い」に気づく力です。〝経営の神様〟と呼ばれた松下幸之助翁でも怒るときもありました。経営に取り組めば当然です。
しかし、なぜ〝経営の神様〟と呼ばれたのか。われわれと異なるのは、自分の「悪い思い」にすぐに気づき、素直に「怒ってはいけない」と反省したからです。この、「正しい思い」に切り変える力を考える力と呼びます。理に適った念い(理念)を働かせて、自己をコントロールし、考える力を発揮して熟慮し、次の正しい行動に移したのです。
気づいて非を認め考え直せば、善い考え方になります。「考える力」とは、第一に自分の思いに気づき、悪い解釈をコントロールする力のことです。
本記事は、月刊『理念と経営』2024年10月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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