企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

世のため人のためなら、 どんな困難にも耐えられる

社長力とはビジョン実現力です。世のため人のために生きた人の日々はワークハードの連続でした。ワークハードとはビジョン実現のために一所懸命努力するという意味です。山中伸弥先生は人の三倍研究に没頭され、現在も偉業に挑んでいます。

「伸弥は経営者に向いてへん」

 山中伸弥先生は研究資金づくりのⅰPS細胞研究財団を通してご活躍されています。日本政府はもっと日本初のⅰPS細胞の実用化を支援する政策をとるべきです。

 マウスでの実験が進むと、アメリカのベンチャーキャピタルは巨額の投資を申し込んできたそうです。しかし、アメリカで完成させれば、日本の患者さんが購入する場合、輸入しなければなりません。それでは輸入が増えて莫大なお金が海外に流出します。
そこで、日本で本格的に取り組み、ⅰPS細胞作製を完成させることにしたのです。日本国民や国の財政にまで視野を広げた経営感覚には驚かされます。

 山中伸弥先生は町工場を経営していたお父さんの言うことを二つ聞いたそうです。「柔道をやれ」と「伸弥は経営者に向いてへん。俺の跡はつがなくていいから医者になれ」という言葉です。お父さんが仕事中のケガで輸血を受け、それが原因で病気になり、みるみる体調が急変していく姿を見つめていたこともⅰPS細胞発見の原動力になったと思います。

 社長力とは観察力ともいえます。われわれが山中伸弥先生から学ぶことは、ビジョンや問題を認識している人は、絶えず解決の糸口を無意識につかみ、出口を探しているということです。すなわち、山中伸弥先生にビジョンと強烈な問題解決の意図があったからこそ、観察力や洞察力が生まれ、ⅰPS細胞発見が可能になったのです。

全員が研究者でなければならない

 社長力とは探求心です。ⅰPS細胞はアメリカでの研究途上で、オスのマウスが妊娠しているという助手の報告から、山中伸弥先生のさらなる探求心が加わって研究成果が進展したものです。

 企業経営も同じです。社長力とは探求心の強さです。失敗から学ぶ姿勢を失ったとき、すでに探求心を失っています。かつて日本の半導体は、世界市場で五〇%強のシェアを占めていましたが、今や六%にまで減少しています。政府は熊本のTSMC工場に一兆円以上の助成金を出しています。アメリカの半導体協定(1986年、半導体に関する日米貿易摩擦を解決する目的で締結された条約)によって日本の強みを削がれた要素は認めますが、日本人の探求心が脆弱になったように思います。

 山中伸弥先生は研究者ですが、失敗しても挫折しても探求し続け、ヒトⅰPS細胞の作製に成功したのです。

 社長だけではなく、経営幹部も、現場スタッフも、組織全員が研究者でなければなりません。①どうしたらお客様にご満足いただけるか、②どうしたら新しい製品や技術やサービスを生み出せるか、③どうしたらもっと増客することができるか、④どういう生き方をしたら世のため人のためになるのか、⑤どうしたら立派な企業経営ができるようになるのか、⑥どうすれば人間力・考える力・仕事力・感謝力の高い人財を育成できるか。まさに、社長力とはこれらの研究に没頭できるかどうかです。このほかにマーケティングやイノベーションなど研究対象はいくつもあります。

本記事は、月刊『理念と経営』2024年7月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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