企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

間違ったと思ったら、素直に直せ

谷井昭雄第四代社長は、パナソニックHDの社長就任時、松下幸之助翁から「社長として思いっきりやれ。間違ったと思ったらな、素直に謝って直したらいい」と助言されたそうです。そして、われわれを前に、「自分に与えられた任務に熱心であれ」と述べられました。

創業者から最初にかけられた言葉

 谷井昭雄第四代社長が初めて創業者の松下幸之助翁に会われたのが三三歳のときです。幸之助翁は六六歳で、テープレコーダーの製品開発の説明に、上司と共に呼ばれました。

 「君、技術屋か。うちも工場で品質管理やっているけれど、それより大事なのは人質管理やで!」と言われたそうです。そして、創業者は「君、商品を抱いて寝とるか。商品を抱いて寝たら物言うてくれるで」と、謎めいた言葉をかけたそうです。

 谷井元社長はこのとき、「与えられた任務にどれだけ自分は熱心だったか」と、自分に厳しく問うたそうです。会社組織では社長がトップの任務を背負います。

 松下幸之助翁は「全員経営」を標榜されていました。つまり、トップから現場まで全員が、与えられた持ち場持ち場の経営者なのだ、と考えておられたのです。全員が自分に与えられた任務において、自分が経営者という認識を持てば、どんな悪条件の中でも会社は発展します。

自分の非を素直に認める

 谷井元社長は「人の上に立つ者だけでなく、組織に所属する者として、自分はこういう役割を担っている。自分は果たしてその任務を熱心にやっているか、自分で自分を評価することが大事だ」と話されました。うまくいけば自分を褒め、うまくいっていなければ自分の非を素直に認める―。

 谷井元社長のお話は「京都・社長塾」のときであり、場所は東山にある松下幸之助翁ゆかりの「霊山歴史館」です。谷井元社長は長い間、公益財団法人霊山顕彰会に関わり、二〇二〇(令和2)年六月まで特別顧問を務めておられました。

『論語』には「過ちて改めざる、是を過と謂う」という章句があります。「誰もが過ちをする。それに気づいていながら改めないのを本当の過ちというのだ」と、谷井元社長にご紹介いただいた『論語』の大家・伊與田覺先生は述べておられました。

 谷井元社長は、「創業者の言われるとおり、人が大事やな、DXやAIが大流行する時代に変わったけれど、どんなに社会が発展しても、科学文明が高度になっても、新しいものを生み出しているのは人間やな。人を媒体としてすべてが生み出されている。自分は百点やと思っている社長は、困った人や」と、幸之助翁との初めての出会いをお話しになりながら、さらに講話を続けられました。



本記事は、月刊『理念と経営』2024年6月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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