企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

家庭でもない、職場でもない、「第三の場所」に

社長力とはブランドの構築力です。幹部の役割は社長のブランドイメージを形にすることです。しかし、確立したブランドを維持するだけでは陳腐化します。日々ブランディングを続けてこそ企業のブランドの永続があるのです。

ストアブランドと商品ブランド

 われわれ購入者にとって最も重要なのが「必要価値」です。マズローの欲求五段階説から述べると、第一に必要だからこそ、自分にとって価値のあるものを求めます。生理的欲求です。

 例えば、ラーメンを食べたいとします。とにかくラーメンが食べたいと思えば、たとえ有名な寿司店が目の前にあっても、スマホで調べたり、タクシードライバーに尋ねたりしておいしいラーメン店を探します。

 次に、集めた情報の中から、日頃よく行く「安心・安全」なラーメン店のような店を探します。マズローの説でいう「安全」が保証されるような確実な店を選ぶのです。顧客は、無意識に自分の心の欲する商品、それを販売している店を選びます。

 ブランドとは「知名度」ともいえます。名前が知られていて、誰もが支持しているような店や商品は信頼される一方、いったん悪いイメージを持たれると「安心・安全に対する信用」は取り戻せません。全国にチェーン展開していたとしても、どこかの一店舗で嫌な気分を体験すると不信感が残り、その系列店を避けるようになります。

 ブランドは顧客の抱くイメージといってもいいでしょう。店のブランドをストアブランドといいますが、それを構成するのは、従業員さんの接遇や表情、機敏さ、店舗デザイン、POP、清潔さ、価格以上の満足です。しかし、肝心の商品に価格以上の値打ち・価値がなければ、商品ブランドは生まれません。ラーメンでいえば、顧客の欲求する必要価値はおいしさであり、商品は絶対条件といえるのです。


自動車メーカー五社に抱くイメージ

 商品に価値がなければ、商品ブランドは生まれず、ストアブランドも確立されません。当然、コーポレートブランド(会社の信用)も低い企業になります。

 日本の自動車メーカー五社のブランドイメージに対して、それぞれに感じるものをお持ちだと思います。創業者のエピソード、歴史、不祥事、現在の社員さんの対応、協力業者への処遇など、コーポレートブランドはさまざまな要素で、顧客から評価されます。

 あるメーカーの社祖や国内自動車産業の発展に命を懸けた先人を畏敬し、その記念館や生家を訪ねて墓参りまでする人がいます。しかし、畏敬するその銅像の写真撮影を、正式な手続きを踏んで許可を得た方が、長い間待たされ、当日広報室の一社員さんに一方的に拒否されたエピソードを思い出します。「この会社は日本の財産」という思いで、〝生涯顧客〟を誓っていますが、社祖や創業者のご苦労を忘れた「ほころび」が一社員のふるまいに出るのです。苦労の上に成った偉業を忘れた一社員の態度・言動が、じわじわと「ほころび」をつくりだしているように思います。

 中小企業でコーポレートブランドができていないと、人の採用で苦戦し、働く社員さんも誇りが持てず、利益も伸びなくなります。社長のビジョン、ミッション、パーパスが必要な所以です。




本記事は、月刊『理念と経営』2024年4月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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