企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

後継者に必要な「経営の二本柱」

社長力とは、企業を永続させる一ランナーとして事業承継をスムーズに行う力です。ホビー商品を扱う株式会社冒険王は、三代目社長が「可能思考」で挑み、短期間で「革新」し、二代目である会長とともに会社を成長させています。成せば成るのです。

必ず道はあると信じ、実践すること

 コンサル業務や研修、出版事業などを行う仕事柄、事業承継の相談を多く受けます。事業承継が遅れている一番目の要因は、社長自身が「自分一代でよい」という意識で経営している場合が多いからです。

 その理由は「息子にだけは自分と同じ苦労をさせたくない」という親心です。痛いほどわかります。しかし、なぜ「立派な会社にして承継する志を立てなかったのか」という疑問は残ります。自分が事業承継したときや起業時の初心を忘れたのでしょうか。

 事業承継を無事に終えている企業の多くは、「立派な会社にして、子・婿・嫁・孫・社員を育てて、承継する!」という志があります。どうしても後継者が見つからなければ、M&A(合併・買収)でもいいでしょう。「企業は社会的公器」という使命感を持ち、そのために自分自身の「人間力・考える力・仕事力・感謝力」を磨いて学び続け、「泥沼同然」から這い上がって、無事に三代目に事業承継した経営者もいます。

 自身のミッションとして「創業者の苦労」を思い、自ら承継の覚悟を決めて、自己鍛錬する後継者も多くいます。苦労の末、優れた企業になった冒険王の堀岡洋行会長、堀岡宏至社長の親子に、過日「体験的事業承継ワンポイントセミナー」で、事業承継の備えの大切さをお話しいただきました。

 堀岡会長は、家具業の小売店の後継者として「堀岡」の二代目を承継しました。しかし、家具業界は構造的に問題を抱えており、玩具を扱う「冒険王」を一から起業します。随分と苦労をしながら、それらをイノベーションして、現在のホビー専門店六五店を好調に軌道に乗せています。

後継者の問題が半分、社長の問題が半分

 堀岡会長が一番苦しかったのは、家具業界からの撤退を創業者に告げ、経営革新を決意したときです。「家具業を創業して、順風満帆だった両親の流す涙が一番辛かった」と振り返ります。

 それだけに、ホビー商品に懸ける念いが強く、三代目も四代目への承継を誓って全国を駆け巡り、二代目の「企業は人で始まり人で終わる」という経営哲学を継いで人材育成に余念がありません。

 なぜ、事業承継が遅れるのか? 第一の理由は、親子のコミュニケーションがとれていないことです。家族経営なら社員さんもおらず、ある意味自由でいいと思います。しかし、小企業になると、社員さんや慕ってついてきた幹部もいます。子どもがだめなら、社内からでも希望者を募り、その人たちに経営感覚を身につけさせるのが社長の使命です。

 過日のセミナーでは、事業承継のタイプには①親族内承継、②社員承継、③社外への引継ぎ(M&A)があることを事例とともにお伝えしました。

 重視する後継者の資質・能力を、多くの社長にお聞きすると、一番多いのが「経営に対する意欲・覚悟」です。それが満たされれば、能力開発の場を与え、自己成長の体験をさせ、徹底して経営感覚(気づきの能力)を身につけさせるべきです。

 三〇年間「後継者セミナー」や「起業家養成スクール」を行ってきて思うのは、後継者の問題が半分、社長の問題が半分です。実際、事業を渡す側の社長から「引き継いでほしい。任せたい。だが、危ない」という気持ちから、精神的にも体力的にもしんどいという本音も聞いています。


本記事は、月刊『理念と経営』2023年12月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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