企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

「両利きの経営」で アマゾンと互角に戦う

人材の必要スキルは約八年前から変化しています。ウォルマートのダグ・マクミロン氏は、次々と新しい手を打ち、既存店舗を活かしてアマゾンのアタックに抗して、知の探索を実行しています。「企業は人なり」です。社長の器以上の企業にはなれないのです。

二〇一五年から人材の必要スキルが変わった

 二〇一五年までの人材に関する必要スキルは、真面目さや注意深さ、ミスがないことなどでした。しかし、それ以降はデジタル社会の影響もあり、「問題発見力」「的確な予測」「革新性」になっています。

 これは世界経済フォーラムという世界的な組織の発表を受け、経済産業省が提示したものです。つまり、人が主役のマネジメントの「人」とは単なる真面目さだけ、注意深さだけ、ミスがないだけではないということです。

 さまざまな問題や課題が山積みする現在、マネジメントも複雑な要素が求められています。第一に「問題は何か」という本質を理解し、把握する力が必要です。わかりやすくいえば、「気づきの能力」です。社長力とはこの気づきの能力と同義語です。

 PEST分析というマーケティングの手法があります。外部環境を政治、経済、社会、技術の四つの要因に分類し自社に与える影響を読み解くものです。そうした手法を用いて外部環境の激変に気づき、いち早く手を打つ時代になりました。それだけではありません。社長がいくら気づいても、問題を解決していくマネジメント能力を持った経営幹部の人間力、考える力、仕事力、感謝力が必要不可欠です。

 二〇一四年、米小売り最大手ウォルマートのCEO(最高経営責任者)になったダグ・マクミロン氏は、ECでアタックしてくる米ネット通販最大手のアマゾンに抗すべく、IT関連企業を約三三〇〇億円で買収し、全米のリアル店舗を最大活用するための意思決定をしました。

 当時、アマゾンのITを活用したシステムに、流通業界の多くは次々に連邦破産法に基づき破綻していったのです。

三つの力を統合する社長のリーダーシップ

 ミドルマネジメントは、ダグ・マクミロンCEOの戦略案を具現化するために計画を練らなければなりません。効果性、効率性、正確性、迅速性が求められます。管理的意思決定を担うマネジャーも試されます。

 リアルとITを組み合わせたビジネスモデルを実現すべく、物流などリアルを強化する部署、IT化する仕組みなどを考え、形にする役割です。オペレーション(作業工程)を大胆に組み替え、ダグ・マクミロンCEO他、トップマネジメントが決定した方針を、すべて実行に移す緻密なプランを立てる必要があります。

 迅速かつベストなプランを立てなければ、強敵のアマゾンが迫ってきます。準備を整えて、目標達成のための管理的な意思決定を素早く形にして成し遂げなければなりません。一番難しい任務を背負うのがミドルマネジメント(管理力)と言ってもいいでしょう。

 ミドルマネジメントは経営陣の方針を具体的な手順にし、実行はロワーマネジメントが配備されます。それぞれが果たす役割を担い、適正に業務的意思決定をして、的確に現場に伝えます。PDCAサイクルを回す際の誤差や不具合が起きたときに、成果をつくり上げるために業務的意思決定をするのがロワーマネジメントです。ウォルマートでいえば店舗のマネジャークラスです。

 社長力とは、その三つのポジションを統合する力です。リーダーシップや戦略能力が試される立場で、ダグ・マクミロンCEOは、当時、一二〇万人のスタッフやパート、アルバイトを動かし、受注、ピッキング、宅配、入金など、従来のオペレーションを短期間で革新しました。

本記事は、月刊『理念と経営』2023年4月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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