企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

永続するには「ひと」を育てるしかない

社長の最大の仕事は経営理念の確立であり、「人が主役のマネジメント」で、働く人々を物心両面にわたり豊かにすることです。三和建設の森本尚孝社長は、人の可能性を信じて「つくるひとをつくる」の経営理念を掲げ、見事な飛躍を遂げています。

人が主役の経営と貢献にフォーカス

 大阪に本社がある三和建設の森本社長は、経営理念を軸に「人が主役のマネジメント」を実践されています。ケース・メソッド授業の「田舞塾」の講師として、初日に三時間にわたり講演と質疑応答をしていただきました。誠に感慨深いお話でした。

 田舞塾はすでに開催して二四年になり、これまでに約三〇〇人近い実務経営者や経営学に関する著名講師をお招きしています。日本IBMの椎名武雄氏、パナソニックホールディングス四代目社長の谷井昭雄氏、ユニ・チャームの高原慶一朗氏、元ネスレ日本CEOの高岡浩三氏、グーグルやスターバックスの元日本法人社長ほか、「人が主役のマネジメント」を実践している方々ばかりが講師です。

 デジタル時代にあって、三〇〇人のお話の共通項は「デジタルを活用しながらも、あくまで人が主役の経営に徹し、貢献にフォーカスした企業が結果的に好業績をあげている」ことです。

 森本社長は、建設業界が右肩下がりの一途をたどる中、父である三代目社長が経営的に苦しい局面に立たされ、資産リストラ、人員整理を余儀なくされる渦中に、四代目就任を前提に、二〇〇一(平成13)年に大手一流企業から戻ります。

 逆風の経営環境で価格競争が激化し、その上に風通しの悪さ、裏表の使い分け、誇りの喪失と、ネガティブな組織風土が待っていました。現在、四代目社長として、サントリーの山崎蒸溜所を手がけるなど、総合建設業である自社の強みを最大限活かして三つの分野に特化し、〝選ばれる存在〟になるための事業のブランディングに取り組んでいます。

 他社にない美意識を感じさせるデザインの賃貸マンション、特別な価値を提供している食品工場、今までのノウハウや技術を駆使した物流倉庫など、講演のモニターに映し出される同社の実績は実に見事です。

「ひと」こそが三和建設の資産

 経営理念の浸透を裏づけるような、見事な企業文化をつくりあげた会社でも、想像できないほどの苦難の過去があります。三和建設も同じです。かつては多重債務や厳しい資金繰り、倒産の回避が最優先事項という中で、人とモノのリストラをせざるを得ませんでした。しかし、「残ったのは『ひと』だ」と、自社の可能性に目を向け、「ひと」こそが三和建設の真の資産という考えで、挑む姿がとても印象的でした。

 空理空論ではなく、現実に乗り越えられた人物は折れません。森本社長は、次のステージに素早く目を向け、「三和建設の目指すものと経営理念」づくりに着手しています。結論として、「ひとに選ばれる会社」として永続する会社を目指します。その言葉の背後に崇高な社会的責任を感じました。

 単なる永続ではありません。「永続しなければ自社で建てた物件を放置することになる」という想いがあります。理念は単なる経済行為の建前ではありません。理念の「理」は、物事が成り立つ法則です。お客様に対する社会的責任の観点で、理に適った念いが成長の原動力になっているのです。永続するにはより良い建物を造れる「ひと」を育てるしかない。「つくるひとをつくる」という経営理念の誕生です。

本記事は、月刊『理念と経営』2023年3月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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