企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

提案からイノベーションが生まれる

社長は幹部や現場スタッフの強みを引き出す最高意思決定者です。合理的な経済人としてタスク機能だけの組織は疲弊します。一人ひとりの強みを発揮させる「人を主役にしたマネジメント」は中堅・中小企業だからこそ強く求められています。

ハイパフォーマンスを生む現場をつくれ

 組織のマネジメントは長い年月をかけて討議されています。これがベストという組織はありません。単に組織論で片付けられるものではないのです。〝マネジメントの父〟P・F・ドラッカー博士でさえ、学者や評論家のいう理論理屈の組織だけでは人は動かない、マネジメントは実践なのだと述べています。

 中小・中堅企業ほど、「わが社は何のために存在しているのか」に対する答えを持たないまま、一時的なムードに押し流されがちです。流通革命を唱えたD社は、残念ながら「人」が主役ではなく、売上高や利益、価格が主役になって、成長のみの合理的な社風で巨大な企業組織をつくるとともに、巨額の負債を抱えて破綻しました。

 D社だけではなく、偏った理論に踊った社長は業界そのものにまで価格競争を生み出し、価値づくりではなく売価の安さで争ったのです。合理的な標準化戦略は差別化ではなく、砂さじょう上の楼閣でした。意思決定者である社長の責任はさらに重いのです。

 まず、社長はハイパフォーマンスを生む現場をつくることが大事です。そのために「PDCAフォーマット」をどう活用するのかが問われます。

 自主性、主体性を引き出し、実際に仕事のストーリーを自分で考える習慣をつくり、仕事スキルを高めている企業は多くあります。

中村工務店が県内首位を維持する理由

 長崎県の中村工務店は、一四年間、長崎県のリフォーム会社でナンバーワンの業績を維持しています。その理由は三つあるようです。基本はデジタルを活用しながら、業務によっては人的資源を徹底集中して関係性を築き、圧倒的な差別化を生み出しています。人が主役のマネジメントは、中堅・中小企業にとっては最適のマネジメントなのです。

 理由の第一は、PDCAサイクルを回せる人財育成を行い、新たなスキルを身につけて人を活い かし、その人を積極的に登用しているのです。①やる気、②やり方、③やる場を与える手法は、われわれの研修活用で得意とされており、後は組織のトップである中村鉄男社長とミドルマネジメントの役割です。

 社長の経営哲学が試されます。単に利益さえ出ればいいという合理主義に偏るとうまくいかず、「バラバラ組織」になってしまいます。即効性があるようで短命なマネジメントです。

 理由の第二は顧客の創造です。顧客活動は働く人の最大の社会貢献の場であり、貢献欲求を満たす組織の仕組みづくりが、社長に求められているのです。マネジメントの目的は成果を生み出すことです。ドラッカー博士は次のように述べています。

 「マネジメントが行うべきことは、自らの組織があげるべき成果を明確にすることである。これは、実際に取り組んでみれば明らかなように、最も難しく、最も重要な仕事である。組織の外部に成果を生み出すために資源を組織化することこそ、マネジメントに特有の機能である」
(P・F・ドラッカー/上田惇生訳『明日を支配するもの』ダイヤモンド社)

 ドラッカー博士の言う成果は「顧客満足の最大化」です。第三の理由は、顧客満足の最大化の結果として自社の「最大利益」をあげることです。ドラッカー博士は次のように述べています。

 「利益をあげることは責任である。社会と経済にとって必要不可欠なものとしての利益については、弁解など無用である。企業人が罪を感じ、弁解の必要を感じるべきは、経済活動や社会活動の遂行に必要な利益を生むことができないことについてである」
(P・F・ドラッカー/上田惇生訳『マネジメント(上)』ダイヤモンド社)

本記事は、月刊『理念と経営』2023年2月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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