企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
社長力
2022年3月号
デジタルは万能ではなく 活用の仕方が重要です

デジタル社会が進展しています。社長はデジタル技術を恐れるのではなく、経営資源の一つとして善用すべきです。生産性を上げ、顧客づくりや顧客の満足に活用し、社内の意識改革や働く人々の仕事の有意義性を高めるなど、最大活用していく力が試される時代です。
米小売り大手の熾烈な闘いに学べ
デジタルの覇者アマゾンと、リアルで世界一の売り上げを誇ったウォルマートの戦いは、ウォルマートのダグ・マクミロンCE〇(最高経営責任者)の奮闘で、次のステージに移っています。
アマゾンは既存の流通業を次々に破壊してきましたが、次の手は「リアル」参入です。約三〇〇〇店舗をつくる戦略でウォルマートの強みを打ち砕く考えです。逆にウォルマートはデジタルに力点を置き、全米約四八〇〇のリアル店舗を最大の武器として、ビジネスモデルそのものを大きくイノベーションしています。
ウォルマートは一時、アマゾンの躍進で苦戦しました。その原因は、現在のダグ・マクミロンCEO以前の「経営陣の対応の遅さ」にあったと思われます。敗北の連続にもかかわらず、コストの使い方に戦略的な誤りがありました。旧来のやり方で相変わらず出店にコストをかけ、海外進出で一部失敗してもそれを省みずイノベーションしなかったことが、アマゾンにつけ入る隙を与えたのです。
しかし、二〇一四年にトップに就任したダグ・マクミロンCEOは、出店ではなくデジタル化を加速させ、それに合わせてオ
ペレーションも変えました。現場からの声に耳を傾け、そのアイデアをオペレーション改革に活かし、一二〇万人いる現場スタッフがわかりやすいように、作業の仕組み変更をアプリの動画で伝えたのです。
現場の隅々にまでデジタルを浸透させると同時に、IT関連企業のM&A(合併・買収)や、ーT技術に長けた者を関連子会社のトップに据えるなど、戦略的な投資を続けたのです。
中小企業もまずは自社内から変容せよ
冨山和彦氏は、ボストンコンサルティンググループのコーポレイトディレクション代表取締役を経て、産業再生機構設立に参画しC〇〇(最高執行責任者)に就任。その後、二〇〇七(平成19)年に経営共創基盤(IGPI)を設立し、現在IGPIグループ会長を務めます。
富山氏は「トヨタはデジタル化の影響をほとんど受けていないため、GAFAに利益を奪われなかった。日本的な徹底した現場主義を貫いたことで、効率的な経営戦略を生み出していったことがトヨタの強みだ」(プレジデントオンライン)と述べ、現場主導の改良的イノベーションの積み重ねがトヨタの競争力の源泉であると高く評価しています。著書でも、デジタルはあくまでも道具であり、デジタルを使いこなすコーポレート・トランスフォーメーション(会社の変容)の重要性も強調しています。
産業再生機構CO〇の体験から、資金繰りの苦しみなどを知らない単なる評論家とは異なる発言が多く、深い感銘を受けました。デジタル化と同時に、意思決定や組織、マネジメント、オペレーションなどの変容を急ぐことの重要性が述べられています。中小企業も、ダグ・マクミロンCEOが舵を切ったように、まずは自社内から変容しなければなりません。
本記事は、月刊『理念と経営』2022年3月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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