企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

"素直の初段"を求めて修養した「経営の神様」

社長の人間的な側面と、どう舵を切るかというリーダーシップの両面が強く求められています。どんな困難の中でも可能性はあります。"何とかなるだろう"という気持ちで経営が成り立つ時代は過去にもありません。幾多の逆境を乗り越えて希望に変えていくのが社長力です。

【大事に直面してもうろたえるな】
「幸之助は困難に出会った時、『絶えず大事に直面してもうろたえるな』と言っていました。単に策を弄するのではなく、大局からものごとを見て、冷静沈着に決断する人でした。世の中の一人ひとりの人間は、どんな立場にあっても生身の苦悩に向き合って生きてます。苦労しても大事に直面してもうろたえなければ偉大な英知に目覚めるのです」(木野親之「松下幸之助に学ぶ・指導者の三六五日』コスモ教育出版)

ご自分の、幾多の困難を乗り越えられた貴重な体験からくる言葉は、崇高にして多くの悩める人を救います。何故、松下幸之助翁が「経営の神様」といわれるのか。それは、ご自分の体験から獲得した経営の橄髄を、誰よりもわかりやすく述べられるからで善かれあしかれ、われわれはうろたえてはいけませんし、逆に有天になってもいけないのです。いつの時代でも社長に人間力が求められるのは、この「うろたえるな」「有頂天になるな」の二点に尽きるような気がします。うろたえるのは、経営の原理原則が身についていないからです。有頂天になるのは、人間力が備わっていないからです。幸之助翁のように、世に名立たる経営者は一つの法則性を見抜いています。すなわち、こういう混迷のときこそ虚心坦懐にして、私心を捨てるのです。四書の一つ「大学」にはプレないた人になるための三要素が述べられています。第一の条件は「明徳を明らかにするに在り」です。明徳は人間が生を受けたときに、天与のものとして人間に備わっている優れた徳性です。その潜在化している能力を明らかにしていく力を社長力といいます。

【経営の原点に戻り自己を修める】
明徳を明らかにするためには自己修養が要ります。木野親之先生は「社長は心配してなんぼや。儲かりたいが心配するのは嫌や、そんな考えが会社をダメにする」と述べています。私心に覆われると、人間は安易な道を求めるようになります。天性の才能は誰にもあります。しかし、われわれは私心という厄介なものを持っています。私心に翻弄されて知識を安易に捉え、「知っている」「わかっている」といった感覚で自己満足しがちです。卒業証書は人生にはありません。松下幸之助翁をみとられた谷井昭雄・パナソニック第四代社長は、「幸之助はいつも何かを求め続けていた人やった。「これでいい」という終わりがなかったな。最後まで物事を探求した人やった」と述べています。つまり、単に利益を上げればそれでいい、という安直な考えをされなかった。社会からの要請と内なる志の一致を目指して、自らに問い、自らに答えておられた。いつも経営の原点に戻り自己を修める経営姿勢を崩さずに、経営という場を最高に活かして、徳を明らかにされたのです。


本記事は、月刊『理念と経営』2022年1月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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