企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

どんな不況でも 仕事は無限にある

一〇〇年に一度もこない試練の年が二〇二〇(令和2)年でした。社長力が一番試された年です。しかし、問題は明確に見えました。どう知恵を絞って事に当たるか。厳しさや苦しみの中でも飛躍した企業はたくさんあります。希望を持って問題に挑みましょう。

問題がわかれば
解決したようなもの

  社長が一番怖く苦しく悩むのは、問題が見えないときです。新型コロナウイルスの問題は続くでしょうが、こういうときにこそ社長力は磨かれていくと思います。私が創業した外食企業は、五〇年目にして初の赤字となりました。まだ軽度で済んだと言えるのかもしれません。現社長は「厳しい時代こそ創業の精神に戻ろう」と、今までにない決意で新年を迎えたと思います。前向きに捉えて知恵を出すのが一番です。
 松下電送の木野親之元社長は、三五歳で松下幸之助翁から企業再建を託されたとき、「君な、問題がわかればもう解決したようなもんやで!」と鼓舞されたそうです。私は最初にその話をお聞きしたとき奇異に感じました。「問題があるからわれわれは悩んでいるのに」と、密かに心の片隅で納得できないものを感じていたのです。
 しかし、お聞きしていくうちにその言葉の意味を深く理解できていないことに気づきました。この経験から、悩みの実態は事実を見ないことから起きるのだと思うようになりました。事実を直視して、問題を解決していくのが社長力です。
 二〇二〇年、突如迎えた新型コロナウイルスの問題で、今なお苦労されている人がいたとしても、多くの企業が初春を迎えることができました。われわれの祖先ホモ・サピエンス(ラテン語で「賢い人間」の意味)は、火山の爆発、氷河期、いろいろと絶望を抱く時代があっても、知恵を使いながら希望へと辿りついてきたのです。問題は宝の山です。必ず解決できるのです。
 パナソニックの第四代社長・谷井昭雄氏が、ある講演で大勢の苦悩する社長や幹部に呼びかけられました。「何がVital(大事なこと)で、何がTrivial(取るに足らないこと)か、順序が明確にハッキリすることによって経営がスッキリしてくる」。体験からにじみ出てくる言葉に、参加した約四〇〇人の社長は身震いしていました。


不安がっている
暇はない

  企業経営は不確実性が前提となっています。この世の中には確実なものは一切なく、仏教的に言えば「諸行無常」であり、絶えず変化しているのです。また「万物流転」とはヘラクレイトス(古代ギリシャの自然哲学者)の言葉です。
 特に、企業経営はー寸先は闇"といわれるように、何よりも不確実性が高いのです。社長力とはその不確実な状態を少しでも確実性の高いものにしていく力です。
 だからこそ、経営幹部や社員さんの力を結集しなければ、切り抜けることが難しいのです。経営幹部や社員さん、パート・アルバイトさんまで、三位一体の組織にしていく努力が社長に問われています。人材がいれば大きな機会となります。
 まさに不可能を可能にして、困難を切り開いて夢の実現を果たすのが社長力なのです。ある面、自分がどれだけ学び、自助努力し、訓練してきたか、その体験の総和が問われます。不安がっている暇はないのです。今まで目の前のどんな問題でも解決してきたはずです。
 問題は尽きませんが、把握すれば、すでに一つ解決したことになります。幸之助翁が言われた「問題は宝の山」の意味がようやくわかりました。

本記事は、月刊『理念と経営』2021年1月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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