企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

コロナ危機は「修養」を進める最大の危機

自らを修め、自らを養う力のことを社長力と言います。要領も必要です。デジタル社会への対応も重要です。それと同時に「経営とは、人間とは、己とは何か」を問う力が社長には求められているのです。

“逆境”を善用して精神の修養に役立てる

 世界中の新型コロナウィルス騒ぎで、中小企業経営は厳しい局面を迎えています。日本の
国内総生産)の70%は中堅・中小企業が担っています。しかし、緊急事態宣言解除後も経済状態は回復するどころか、悪化をたどるところあります。
 IMF(国際通貨基金)が6月24日に発表した本年度の世界の経済予測は非常に厳しいものでした。4月の発表時では、成長率はマイナス3%でしたが、6月ではマイナス4.9%と大幅な下方修正となりました。特に、日本はマイナス5.8%であり、アメリカはマイナス5.9%からマイナス8.0%です。このままでは、世界のGDPは本年と次年度で約1300兆円が失われると試算されています。
 社長力とはこうした経済状況でも、あえて「逆境を善用する力」のことであり、日頃からあらゆる事態に対処する「準備力」のことでもあります。どこか浮つき気味だったわれわれも、本来の日本の精神に戻るべきです。「武士道」や「修養」などお著作を残した新渡戸稲造が言うように、われわれはこの危機を、人間としての「修養」を進める最大の機会とすべきです。
 「逆境はひたすらこれを避け、取り除くべきおのかというと、僕はむしろこれを善用することを勧める。つまり、逆境そのものを善用して、精神の修養に役立てるのである」(新渡戸稲造著「逆境を越えてゆく君へ」実業之日本社)という言葉は、深く考えさせられるものがあります。

若い時代の修養が後の大きな差になる

 新渡戸稲造は18624年(文久2)年、盛岡藩士の子として生まれます。札幌農学校(現・北海道大学)で内村鑑三と共に学び、クラーク博士に大きな影響を受けキリスト教に入信。その後、欧米に留学して農業経済学を修めました。儒教を学び、幼い頃から修養を心がけて育てられたことがわかります。
 日本人の海外留学の必要性を痛感し、「願わくはわれ太平洋の橋とならん」と誓います。東大の教授をはじめ東京女子大学の初代学長を務め、学生たちに大きな影響を与えただけでなく、国際連盟事務次長としても活躍しました。
 そして、「日本人とは何者かがわからない」という海外の人々に対し、日本人の根本精神を世界に示すために残したのが、英文の著書「武士道」「修養」などです。
 一方「経営の神様」と称されるル松下幸之助翁は、次のように述べています。
 「人は若い間の心がけのいかんにより、後にずいぶん差の生ずるものである。もし若い時代に自己実力の養成に励まず、修養に努めなかったならば、必ず後年、後悔するときがくると思う」(PHP総合研究所編「松下幸之助「一日一語」」PHP研究所、3月17日「修養に場所を選ぶな」の項)
 社長力とはすべてを受け入れる力であり、そういう修養から人生は完成されていきます。
 もちろん、倒産の危機に対する社長のストレスは相当なものです。シリコンバレーなどでは失敗が奨励されますが、その理由の一つは失敗しても自らの傷口は浅いからです。企業の破綻は、日本と違い、投資家たちがすべてを引き受けるのです。
 法整備が整ったとはいえ、日本の社長が潜在的に抱えるのは失敗ではなく、第三者にかける迷惑です。幸之助翁が「ダム式経営」(ダムがいつも一定の水量を貯えているように不測の事態に備えて、資金も人材も蓄えておかなければならないという考え方)を提唱したのは、誰にも迷惑をかけない経営を基本にしていたからだと、松下運送の木野親之元社長に教えていただきました。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年9月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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