企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

なぜ、ウォルマートは負けなかったか

「職場は一将の影」といわれます。組織は、人格的な面も含め、すべて社長に似てきます。
社長の脳を幹部が複写し、幹部の脳を部下が複写します。脳研究の側面からも、社長という“朱”に交われば、“赤くなる”のです。

決意さえあれば必ず企業は生き残る

 新型コロナウィルスの問題が日本経済に大きな打撃を与えています。世界経済の悪化はさらに深刻です。経済学の大家であるハーバード大学のガルブレイス教授の生前の講演を聞き、書物も読みました。著書の「大暴落1929」(日経BP)では、リセッション(景気後退)、デプレッション(不況)、クラッシュ(恐慌)、グレート・デプレッション(大恐慌)に至るプロセスを学びました。
 戦後、ガルプレイス教授の「カウンターベイリング・パワー(生産者と消費者との商品価格を含めた拮抗論)」に刺激を得て、流通革命の大義を持ってダイエーを立ち上げたのが中内功さんです。
 中内さんは戦友が次々と死んでいくなか、沼地のヒルを食べて生き残り、「俺は、すき焼きを食べて死ぬんだ」と執念のように決意し、日本に無事に帰国しました。経済が悪くても、決意さえあれば必ず企業は生き残ります。社長力とは「コロナウィルスに負けない決意」の強さのことです。
 しかし、ご存知のようにダイエーは永続しませんでした。「資金・店・土地」があり、繁盛していることに胡坐をかいてしまったのです。これは創意工夫を失うことを意味します。今の日本も同じ状況にあるような気がします。
 アメリカのウォルマートは、世界で一番売上高の多い小売業です。2018年度の売上高は56兆円超でした。しかし、恐ろしい敵が現れたのです。1994年にウェブシステムをつくり、アメリカ最大の書店であるバーンズ・アンド・ノーブルを打ち負かし、世界中にネット販売網を張り巡らせたアマゾン・ドット・コムです。90年代後半、創業間もないamazonは資金繰りで苦しんでいました。私がスタンフォード大学に研究員として赴任していたときで、当時は「リアル書店が勝利するだろう」という意見が大半でした。

嘆いていても創意工夫は生まれない

 ところが、その後、amazonはいろいろな市場を席巻し、毎年数千人の流通小売業がなくなっています。ウォルマートも例外ではありませんでした。年々業績に低下傾向が見られ、同社も危ないのではないかと囁かれ始めたのです。
 しかし、ウォルマートは負けませんでした。10年という年月をかけて、リアル店舗の強みにEコマースを掛け合わせた販売戦略を成功させ、業績を回復基調に乗せたのです。理由は、創業者サミュエル・ムーア・ウォルトンの「持たざるを嘆かず」の基本哲学です。「なければ創意工夫すればいい」という「可能思考能力」の発揮です。
 新型コロナ問題はさまざまな波紋をわれわれに投げかけています。一万三千数百社の会員を抱える日創研にも、多くの経営相談がメールや電話で寄せられます。電話越しの声や文面から、相当の打撃を受けていることがよくわかります。多くの社長が表面には出せない精神的な苦労を体験しており、この苦境が当分続くと悲観している方も多いと思います。
 ここでわれわれ中小企業が学ぶべきことは「ないことを嘆かないこと」です。嘆いていても創意工夫は生まれません。代表的な“言い訳”は「人がいない」「時間がない」「お金がない」「能力がない」の四つです。言い訳を持つ人が一番失っているのがチャレンジ精神です。ウォルマートにはお金も人もなかった。なかったから創意工夫が生まれたのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年8月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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