企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

物事を成就させるには柔軟性と執着心が欠かせない

昨年、吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞し、日本中を沸かせました。産業界からの受賞は日本人の底力として、多くの経営者やものづくりの人たちに勇気を与えました。失敗しないと成功はない、という芳野さんの言葉を深く噛みしめたいものです。

「失敗しないと絶対に成功しない」

 旭化成名誉フェローの吉野彰さんが、リチウムイオン電池の研究でノーベル化学賞を受賞しました。こうした快挙は国を挙げてお祝いしなければなりません。誠にめでたい出来事です。
 受賞が決まった後、教授を務める名古屋の名城大学での講義で、吉野さんは「失敗しないと絶対に成功しない」と述べられました。若者たちに対する激励でしょうが、リチウムイオン電池の開発途上、三度もプロジェクトが実らなかった体験こそが言わしめた言葉だと思います。
 社長力とは、自分がやって見せて、その上で幹部や社員さんに檄を飛ばす影響力のことです。われわれは大企業の社長ではありません。中小企業の強みを活かすには、自らが率先してビジョンを語り、そのビジョンにチャレンジし、吉野さんが述べられたように、「失敗しないと絶対に成功しない」と言えるだけの活力が必要なのです。
 一方、吉野さんは日本の大学の基礎技術教育に問題意識を持っておられます。日本が実用化を主導する技術は、超電導、光触媒、カーボンナノチューブ(筒状炭素分子)などが残っているようですが、文部科学省や経済産業省はじめ、国を挙げてもっと科学技術研究に取り組むべきです。
 リチウムイオン電池の世界市場は、二〇二二年には約七兆四〇〇〇億円に拡大すると予想されます。家電やスマートフォンと同じ轍を踏まないためにも、価格競争力で日本の基幹産業の地位を奪い続ける韓国や中国勢に負けないような政策を打ち出すべきです。

吉野さんが危惧する日本の大学の在り方

 文科省は日本の大学教育に関して、二〇一四(平成26)年に方針を出しています。国内の大学から「スーパーグローバル大学」を選定し、一〇年以内に世界ランキング上位一〇〇位に一〇校入れる、という計画です。素晴らしいものですが、かけ声だけで実行が伴っていません。五年後の現在、イギリスんも教育専門誌『ザ・タイムズ・ハイアー・エデュケーション』の調査で一〇〇位以内は二校のままであり、一〇一位から二〇〇位はゼロです。この暗いニュースは、吉野さんのノーベル賞受賞が一掃してくれましたが、政策を発表したからには、安倍内閣はもっと責任を持って力を入れるべきです。
 芳野さんはこうっした大学の在り方について、記者会見で概略、次のように述べておられます。
 (基本的に今の大学の状況につきましては危惧しております。私の考えている理想的な大学での研究は、車の両輪が必要です。一つは、完全にある目標に向かって実現するために進める研究、いわゆる、俗に言う「役に立つ研究」です。
 かたや当然、誰もが気づかないような新しい現象を見つける人も、絶対に必要です。これは目的を先にやってしまいますと、絶対出てきません。ですから、そんなにお金のかかる研究ではないと思いますが、まさに大学の先生ご自身の好奇心に基づく、あるいは、真理の探究で基礎研究をやっている先生に、とんでもないものを見つけられる可能性があるのです。ですから、「基礎研究」と「役に立つ研究」の両輪があって、その二つがバランスしながら進められるのが、私は理想的だと思っています。今の大学はその真ん中辺りをうろうろしている。そこを少し危惧しています。)

本記事は、月刊『理念と経営』2020年2月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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