企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

「戦う事業承継者」が日本にはたくさん存在する

日本には課題が多くあります。なかでも急務なのが、後継者不足と人手不足の問題です。中小企業は生産性も低く存在価値が発揮できていないように見えます。しかし、縁の下(薄利)で社会を支える中小企業がなくなれば、大手企業も困り、さらに国際競争力は低下します。

自主廃業を決める企業がなぜ、増えているのか

 ゼネラル・エレクトリックのCEOであったジャック・ウェルチ氏は、就任した際にすぐに着手したのは、売り上げを上げることでも、利益を増やすことでもなく、後継者を探し出し、立派な次のCEOを育てることでした。
 後継者育成は企業の栄枯盛衰を決定するものであり、台湾企業に買収されたシャープは後継者選びに失敗した一番大きな事例です。あれだけご苦労されて、世界でもキラリと光る企業を起こした創業者の早川徳次さんは無念に思っておられることでしょう。
 これは“他山の石”ではありません。優秀な事業承継者っを育成しなければ、日本では廃業する企業が一挙に増える、といわれています。
 2018年(平成30年)10月時点の総務省の人口推計によれば、総人口は過去最低の1億2644万3000人で、8年連続で減少しています。特に働き手の中心となる15歳から64歳の生産年齢人口は51万2000人減って、総人口の59.7パーセントです。急激な人人手不足問題に政府はどのような対策を打ち出しているのでしょうか。
 付け焼き刃のように、外国人労働者の受け入れを拡大するため、未完成ともいわれる「改正出入国管理法」を19年4月に施行しましたが、現実には事業承継をしてまで継続をする気がない経営者が増えてきています。
 大きな要因は人で不足です。賃金や材料費の高騰に加えて人手不足に嫌気がさして、自主廃業を決める企業が増えているのです。

ビジネスモデル確立に挑戦する小正醸造の苦闘

 鹿児島県に小正醸造株式会社があります。小正佳嗣現社長は4代目です。5月の『日本経済新聞』夕刊で5日間連載された記事には、こう紹介されています。
 「世界で注目されるジャパニーズウイスキー。焼酎の本場、鹿児島から2017年に参入したのが老舗焼酎メーカーの小正醸造(鹿児島市)だ。社長の小正芳嗣さん(41)は焼酎を海外に売り込もうとして苦戦。『世界の共通言語』に例えるウイスキーを通じ、蒸留酒メーカーとして存在感を高めることが、海外市場開拓の近道と考えた。」
 この短い文章に、戦う事業承継の苦悩と成功の道があります。彼は日創研が行っている事業承継者のための「起業家養成スクール1年間プログラム」でご縁があり、小正醸造の20数年の歳月を見てまいりました。っそこには、言葉にできない苦闘が山ほどありました。
 この会社が新事業に挑戦していった物語は、ケース・メソッド授業でも取り上げました。実際にウイスキー蒸留所視察をし、上場企業の社長も参加されている200名近いメンバーで、2日間にわたって、小正醸造のさらなある成長の可能性を、グループやクラスに分かれて討議しました。そのとき、全員が彼の決断力と努力を称え、ビジネスモデル確立までの長い苦戦を勝ち抜いたことに感動しました。日本中にはまだたくさんの戦う事業承継が存在するのです。
 小正醸造は、1883(明治16)年創業の焼酎の蔵元です。4代目芳嗣社長は焼酎ブームの最中、海外戦略でたくさんの国を回ります。大学院で醸造学の修士課程を学び、イスラム圏に向けたアルコールゼロの焼酎を販売するなど、いったん落ち込んだ市場の獲得に世界を奔走します。
 しかし、海外進出には厚い壁がありました。15年間挑み続けても、結果は、海外にいる日本人の消費に留まるのみです。国内需要は下がり、それをカバーすべき海外市場は、粗利益獲得どころか、販売費および一般管理費がかさむだけになるのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2019年9月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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