企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

日本は技術・経済・向上心で世界に敗北している

社長力とは、働く人々の手本になる力のことです。「天職発想」を持ち、誰よりも勤勉に努力し、創意工夫と熱意を持って生きることです。脳は労せずして手に入れたものよりも、何らかの対価を払って入手したものに価値を置きます。咲くまでの過程が重要です。

いのちを粗末にしたツケは老いたころに回ってくる

鹿児島の天文館に「小野」というお寿司屋さんがありました。
私は五年間かけて父親の借金を返し終えた月に、大阪の寿司吉というお店から夜逃げをして、お客様のアパートで居候をさせていただきました。そして、大阪・難波の大劇ホール前の「はつせ」という大衆食堂でお茶を配る仕事をして旅費を貯め、紹介された福岡の「音羽鮨」に入店しました。
山本精一社長や、当時お店を切り盛りされていた原口登志寛さんとの出会いがなければ、現在の私は存在しないと思っています。
「小野」のご主人は、私の音羽鮨での後輩にあたり、お店を閉店するまでは鹿児島に行くのが楽しみでした。「咲くまでは草と呼ばれる野菊かな」の俳句がトイレに貼ってあり、人生の本質に深く触れたような感動を覚えました。この俳句は希望を訴えており、ある意味で「富貴」を手にした人たちへの警告の一句かもしれません。
洋の東西を問わず、「物に本末有り、事に終始有り、先後する所を知れば、則ち道に近し」の『大学』の章は、豊かさを謳歌している日本人に、人生の法則を教えてくれているように感じます。
物とは、存在という意味だと理解しています。存在するものすべてに本質と末質があり、単純に述べると、本質は人間いかに生きるべきかであり、末質は手段としてのお金のことです。「本末転倒」とよくいわれますが、一度しかない「いのち」を粗末にしていれば、必ずそのツケは老いたころに回ってくるのです。
〝働き方改革〞以来、働くことはまるで悪のようなイメージが若者に定着しつつあります。平成の初めのころに日本を駄目にしたバブルが信じられ、それを助長したマスコミの報道も、正しい職業倫理を伝えようとしていません。人間の存在の本質を忘れたニュースが飛び交っています。

中国は日本以上にがんばっている

中国は日本以上にがんばっている
経済団体で唯一辛口だった小林喜光さんが、この四月に経済同友会の代表幹事を任期満了で退かれました。『日経ビジネス』で、国民の七割は異常という危機感を吐露され、「ジャパン・アズ・ナンバーワンなどといい気になっているうちに取り残され、影が薄いどころか、存在しているのかさえ疑わしい状況になった。(中略)国も企業も次の世代に向けてまっとうなものを残そうとするならば、やはり勝っていかないといけない。(中略)そして負けたという認識がなければ、次に勝とうという意識さえ生まれない。僕が敗北・挫折への認識を訴え続けているのは、本質的には次への出発へのエールだと捉えてほしい」と述べています。
こういう時代認識は、われわれ中小企業にもまったくありません。小林さんは東大卒業後にイスラエルに渡り、世界を若いときから意識して生きてこられたから、いまの日本の現状認識の希薄さに危機感を持っているのです。つまり、日本は技術的にも、経済的にも、人間本来の向上心においても、世界に敗北しているのです。
そして、「内閣府の二〇一八年夏の調査で、国民の七四・七㌫が現在の生活に満足している。僕からすれば異常。勝負している人間は欲求の塊なので、本来、満足するはずがない」とも……。
同じように、松下電器産業(現パナソニック)の四代目社長の谷井昭雄さんに講演をいただいた折、「日本人はがんばっている。しかし、中国はもっとがんばっている。それを忘れて自分たちはがんばっているつもりでは日本は遅れてしまう」と、われわれを諭すように述べられました。

本記事は、月刊『理念と経営』2019年7月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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