企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

「人間を主軸にした国」を、われわれは受け継がなければならない

ご退位される今上天皇は「我が国の戦後の平和と繁栄が、このような多くの犠牲と国民のたゆみない努力によって築かれたものであることを忘れず、戦後生まれの人々にもこのことを正しく伝えていくことが大切である」と述べられています。社長力とは未来を担う人づくりに尽力する志の高さのことです。

未来を担う「人づくり」の意識が後退しているのではないか

誰を尊敬しているか、その対象を尊く感じ、敬う心を深く持つことで人間は磨かれていきます。小中学校の恩師はことさら、私の人生を支えてくださいました。恩師の写真の前ではすぐに小学生に戻ります。純粋になり、素直にわが身を反省することができます。

昭和に生まれ、戦後の貧しさや生きることの辛さを体験した者の一人として、幼い頃に当時皇太子殿下と美智子妃殿下のご成婚式を、講堂のテレビで拝見したことも、社会に出て苦しいときの励ましや勇気の源となりました。

この国に生まれたことを誇りに思い、海外での活動をするときや、起業の決断をしたときも、象徴としての昭和天皇を仰ぎ、ご崩御の際にはホテルの一室で弔辞を心ひそかに書き綴りました。

平成時代が残り少ないなかで、今上天皇の最後のご会見全文や、美智子皇后陛下の平成最後の誕生日のご心情を吐露された全文に、生きる意味や力を与えられました。お立場の上だけではなく、この60年間のお二人には、われわれの想像を超えた悲喜こもごもを感じさせられます。

日本は経済発展の代償としてバブル崩壊を体験しました。テレビの前で、涙を流し倒産の記者会見をした大手証券会社の社長の姿をわれわれは忘れてはならないと思います。平成に入ってからはリーマン・ショック、多くの地震災害など生々しい体験が記憶に残ります。

来年開催される東京オリンピックに続いて、2025年の大阪万博が決定したことは喜ばしいことです。しかし、不穏な世界情勢や、財政赤字、今後の日本経済の危うさを感じるにつけ、政財界の指導層がテレビ中継に映し出される光景や、安楽を刹那的に貪る人の姿に、真に「日本の未来を担う人づくり」の意識が、大きく後退しているように思えてなりません。伝統的な「人間を主軸に置いた国柄」を、われわれは受け継いでいかなければならないのです。

日本的精神といえば、なにより人を敬う精神です。「わが師の恩」を誰もが心中深く持つ国柄は、世界に冠たる日本の誇りでした。大義や恥の概念は、かつての経営者には一つの矜持として強くありました。政治も経済も教育の在り方も、もう一度問うべきではないでしょうか。

本記事は、月刊『理念と経営』2019年4月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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