企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

「真心とは何か」を教える IT活用企業

「運送業」という労働集約型の事業は、人数を増やす、あるいは時間をかけるという考え方に陥りがちです。ただ、人や労働時間の確保には限界があります。しかし「意図があれば方法は無限大」と学び、ようやくデジタルの活用に全員の関心が向きます。

「意図があれば方法は無限大」

 「ChatGPT」が話題になっています。AI(人工知能)を活用したデジタル時代の新しい道具です。中小企業ではなかなかIT活用が進みませんが、その気になれば道は開けます。社長力とは人間力を根底に置いて、素早く外部環境の変化に対応する力のことです。

 滋賀県で物流サービスを手がけるエースカーゴ㈱の中嶋辰也会長は、最初に勤めた会社の家具売り場に配属され、そのクレームの多さに悩まされました。当時は携帯電話もなく、家具の配送先が留守のとき、玄関前に置いて帰ることがあるなど、クレームのほとんどが配達に関することでした。

 その後、一念発起して一九九一(平成3)年に独立し、翌年エースカーゴを立ち上げます。ところが、経営の勉強をせずに創業したためなかなか利益が出ません。一つの理由は、お客様獲得のために価格競争になることです。また、運送業は労働集約型の事業で、人数を増やすか、時間をかけるかという、偏った思考に陥りがちです。人数を増やしたくても人が来ない、時間をかけたくても労働時間が制限される。困り果てた末に、中嶋会長はあるセミナーに参加し、「意図があれば方法は無限大」と学びます。

 意図とは目的です。目的が明確になれば手段は数多くあることがわかります。手段は「5W2H」で考えればいいのです。WHY(なぜ)は目的の意味を掘り下げてくれます。しかし、企業経営は実践ですから、目的は明確になっても評論家が言うように発想が浮かんでこない場合があります。エースカーゴも同じでした。

 きっかけは大量の離職者が出たことです。人手不足になると一人当たりの物流量や配送時間が増えます。すると、中嶋会長を尊敬しているドライバーでも、疲弊して離職してしまう。中小企業の経営課題はこういう問題の繰り返しなのです。

「二対六対二の法則」が社長にも働いている

 組織や集団は、優秀な二割、平均的な六割、貢献度の低い二割で構成されるといわれます。動画学習ツール「グロースカレッジ」で視聴率が高い奥村幸治先生の番組でも紹介している「二対六対二の法則」です。つまり、一〇人中二人の社長が、経営革新を真剣に考えてトライします。「うちの会社じゃ無理だよな」などと、一度決意した気持ちが萎えたり、再度挑んだりと、行ったり来たりの社長が一〇人中六人います。同じ場所をぐるぐる回るだけで突破できないのです。この六人には可能思考の強化策が問われます。突破する力は「人間力」なのです。人間力とは、いったん目的にコミットメントしたら、最後までやり切る力のことです。六人はやや「やり抜く力不足」で結果に結びつきません。

 残りの二人は、目的に対する〝やり抜く〟という気持ちが弱い。能力以前の問題であり、志を高めることを勧めています。

 物流業のドライバーはエッセンシャルワーカーです。社会になくてはならない仕事です。ただ、下請法があるにもかかわらず、値下げ要求に近い形で「競合相手の価格」を提示してくるなど、優越的地位の乱用は、元請け社長の知らない現場サイドで行われています。

本記事は、月刊『理念と経営』2023年8月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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