企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
管理力
2025年7月号
「働きがい」を与えれば人財は育つ

人に働きがいを与えることを管理力といいます。日本人は“働き蜂„と世界に揶揄されました。しかし、その勤勉さがあって、戦後の日本経済は発展したのです。誰かに貢献したい、自己成長したいという考えは今も日本人の根底にあります。
職場の“ゆるさ”と離職意向の関係
働きがいの観点や賃金アップの視点からいえば、経済専門家筋の「賃金低迷の主因は急速な労働時間の減少」という指摘や、「実行すべきは行き過ぎた労働時間規制の緩和」という提言は納得です。
「働きやすい会社をなぜ若者は辞めてしまうか」という疑問などについてまとめた、『ゆるい職場』(中央公論新社)の著者で、リクルートワークス研究所主任研究員の古屋星斗氏は、その著書で新時代の若者の声や仕事に対する考え方を通して、日本社会を紐解いています。
古屋氏は職場の〝ゆるさ感〟と、その会社で「いつまで働き続けたいか」の関係に着目し、①ゆるいと感じる、②どちらかといえばゆるいと感じる、③どちらでもない、④どちらかといえばゆるいと感じない、⑤ゆるいと感じない、の五つに分けてコメントしています。
その上で、離職意向の強い新入社員は、職場をゆるいと感じているグループに多いことを指摘しています。①と答えた人の一六%が「すぐにでも退職したい」と回答し、「二、三年は働き続けたい」の回答を合わせると五七・二%に達しており、長く在職するイメージがありません。
また、⑤の「職場をゆるいと感じない」に答えた新入社員は、「すぐにでも退職したい」意向を持ち、条件の良くない環境で働いていることもうかがえます。
働き方改革より「働きがい」が必要
国際比較をすると、日本の一人当たり年間労働時間は一六一一時間で、資源大国であるアメリカや、韓国の一八七二時間と比較しても少ないと感じます(経済協力開発機構の調査)。仕事に対するモチベーションにしても、一四五カ国中日本は最下位です(ギャラップ社調査)。
この点から推測すると、「ゆるい職場」と感じた五七・二%は働き方改革より「働きがい」を求めているのはでないでしょうか。つまり、自己成長欲求や貢献欲求が満たされず、結果として現在の日本の国の幸福度は極めて低くなっています。時間で管理され、時間から時間のタイムワークで「働きがい」が生まれず、いつの間にかやる気を失っているのです。もちろん、個人の価値観の違いや根底の教育にも問題はあります。
日本では二〇一八(平成30)年六月二九日に「働き方改革関連法」が成立し、同年七月六日に公布され、翌年四月一日から順次施行されています。同じ頃、アメリカで広まった「魔のフライデー」という言葉が印象に残っています。
アメリカでは、働く人に解雇通知を出すタイミングが一番いいのが金曜日だそうです。働く人は金・土で怒り悲しみ、日曜日には現実を受け入れ、月曜日にはしぶしぶ納得する―。シリコンバレーでそのような話を聞きました。規制緩和が低いアメリカでは容赦のない現実があり、ホームレスの多さに驚きます。
一方、日米で比較すると、日本ではある大臣が「プレミアム・フライデー」を盛んに呼びかけました。「月末の金曜日は、早く会社から出て居酒屋さんへ行こう」という趣旨でしたが、驚いたのは日本国民の姿勢です。ほとんどその素振りも見せませんでした。「日本人は働くことへの意識が高い」と感動しました。
本記事は、月刊『理念と経営』2025年7月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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