企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

「経営の現場」の大半は マネジャーに委ねられている

ミドルやロワーの位置にいるマネジャーは、人のマネジメントが任務です。スターバックスは、人をあらゆるものの中心にして「働きがい」に価値を置き、ミッションを共有する人財に育てているのです。

「事業は人なり」は基本中の基本

 パナソニック ホールディングスの創業者、松下幸之助翁は、多くのご著書を出版され、ご講演も多数されています。何度もお聞きしましたが、すべてのお考えの中心に「ひと」を据えておられます。

 「松下電器は何をつくるところかと尋ねられたら、松下電器は人をつくるところです。併せて電気器具もつくっております。こうお答えしなさい」という有名なエピソードは、その代表的なものです。

 そして、「自主責任経営」を説きました。一人ひとりが経営者だと思い、自らの業務に責任を持った主体的な人づくりが、企業の目的そのものと考えておられました。米スターバックスの元CEO、ハワード・シュルツ氏も同じ哲学でした。

 管理力とは、部下の能力開発への熱意です。マネジャー次第で、部下の芽を摘んだり、芽を育てたりします。どちらの経営幹部が多いかによって企業の盛衰は決まります。また、自主性を重んじ、組織のミッションと個人のバリュー(価値観)が一致した職場づくりも大切です。

 つまり、「部下の力量不足は企業成長の道を閉ざす」という意識、責任感を強く持った経営幹部のことを「管理力」と言います。幸之助翁の言われる「事業は人なり」は、企業経営の基本中の基本であり、具体的にいえば、「経営の現場」の大半は、マネジャーといわれる立場に委ねられているのです。

 マネジャーは①チーム全体の視点、②リーダーの視点、自らが権限委譲されているという③マネジメントの視点を持ち、現場からの提案やお客様の苦い情報から革新する④マーケターの視点から、イノベートする力が問われています。

スターバックスはなぜ人手に困らないか

 『ゆるい職場』(中央公論新社)を著された、リクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員は、その著書の中で次のように述べられています。

 「『今の職場、〝ゆるい〟んです』『ここにいても、成長できるのか』。そんな不安をこぼす若者がいる。二〇一〇年代後半から進んだ職場運営法改革により、日本企業の労働環境は『働きやすい』ものへと変わりつつある。しかし一方で、若手社員の離職率はむしろ上がっており、当の若者たちからは、不安の声が聞かれるようになった」

 「自律的な若者の離職」をどう防ぐか、が企業の課題になっているのです。一方、同じ日本にいながら、スターバックスはなぜ人手に困らないのか。答えは簡単です。「働き方改革」ではなく、「働きがい」があるのです。コーヒーの焙煎と、自分たちの笑顔やホスピタリティーが、自宅でもない、職場でもない第三の場所(サードプレイス)を創り出しているという、やりがい、仕事の意味、働くことへの自負、お客様の喜びが自分の喜びになっているのです。

 ハワード・シュルツ氏は当初、自分のビジョンを実現するため、スターバックスをいったん離れ、資金集めに苦労しながら、「イル・ジョルナーレ」という自分の理想とするカフェから出発しました。

本記事は、月刊『理念と経営』2025年6月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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