企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
管理力
2025年4月号
クリエイティブ・ペアを目指せ

経営幹部は社長のクリエイティブ・ペアでなければなりません。経営課題や問題を解決するには、社長と幹部がもっと学び、知識を道具として活用し、それを知恵の働きで解決することが求められています。善循環の組織づくりの確立を急ぐべきです。
クリエイティブ・ペアとは何か
クリエイティブ・ペアとは、今年一月に永眠された、一橋大学の名誉教授、野中郁次郎先生の言葉です。日創研の「新しい時代の社長学講座」や本誌で、先生は「個人を組織に向かわせる知的コンバットを行う相手」と定義されています。
わかりやすく言えば、クリエイティブ・ペアとは、経営革新をしたり、新しいものを創造するときに、社長の力になれる経営幹部です。目的実現のために、自分の意見を述べ、異なる考えでお互いの視野を拡張し合って実現するのです。
つまり、管理力とは目的(企業の存在意義)に共感した一人ひとりが、「同じ釜の飯を食った同志」として、無我夢中で目的実現のために意見をぶつけ合う、クリエイティブな存在のことです。
社長力で述べた通り、常日頃から「好意の返報性」の原理を活用して、健全な対人関係をつくり、いざ「企業目的のための会議では、自ら日頃鍛えた知恵や知識を駆使して、本音で意見を出し切ると、そこに組織的知恵が生まれる」と、野中先生は講義でもおっしゃっています。
つまり、管理力とは、社長一人にぶらさがるのではなく、自分の枠から飛び出し、日頃から学習して組織革新を成し遂げていく力のことです。対人関係能力は仲良しクラブをつくることではありません。
経営幹部は、社長以上に、知恵(暗黙知)や、知識(形式知)や、実践知(実践で身につけた知)が求められます。さらに組織目的達成のためにクリエイティブ・ペアになれるだけの素養や知識や創造性が、幹部には求められます。
「敵意の返報性」が声や表情にも表れる
社長力で述べた、二つ目の「敵意の返報性」には注意が必要です。組織の対人関係がこじれるのは、ミスが起きたときです。上司から注意を受けたり、結果がうまく出せなかったりすると、部下は上司に、経営幹部は社長に、敵意を抱く場合があります。つまり、注意を敵意と感じたとき、一方的に「敵意の返報性」の原理が働きます。言い訳や虚偽の答えを述べるだけでなく、場合によっては敵意が声のトーンや表情に表れてきます。
逆の場合もあります。部下から反論されたときに、部下と同じレベルで上司が敵意を返報している場面があります。人間にはそういう心理的傾向が誰にもあるのです。
管理力とは、相手から敵意を持って、嫌な言葉を浴びせられたとき、言い返したくなる自分の心理作用に気づく力のことです。
失敗したら、素直に「すみません」と伝えることです。「好意の返報性」の原理を実践するのです。自分が失敗したのに嫌な表情や横柄な態度、「敵意の返報性」を無意識にとっている場合が多くあります。これはチームへの破壊的返報性です。
しかし、これではハイパフォーマーとしての対人関係能力は磨かれません。周囲までが嫌な気分になるだけです。とくに、言い訳を言うことで「敵意の返報性」を増幅させます。
本記事は、月刊『理念と経営』2025年4月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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