企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

「考え方」で マイナスがプラスに変わる

会社の盛衰を担う幹部には、社長同様「考える力」が強く求められます。「修道者であっても、キレそうになる日もあれば、眠れない夜もあります」とは、ノートルダム清心学園理事長だった渡辺和子先生の言葉です。困難にめげずに考える力を磨きましょう。

肯定的に解釈すれば解決策は無数にある

 「社長力」で思考の質について述べました。思考の質を磨けば考える視野が広がり、そこに可能性の道筋が見えてきます。つまり、「肯定的に解釈する力」を養えば、解決策は無数に存在します。

 肯定的に解釈するとは、現状起きている出来事をいったん受け入れる力です。われわれは、とかく物事に自動的に反応します。反応しているという自覚すらない場合が多く、無意識に自己の思いにそぐわないことを回避しがちです。専門用語では「自動反応」、あるいは「生体反応」といいます。

「修道者であっても、キレそうになる日もある」とは、渡辺和子先生の赤裸々な本音でしょう。そのお言葉に、敬虔なクリスチャンのお姿を感じます。おそらく、三〇代半ばで思いもかけず大学の学長に任命されて、心乱れることも多かったときの体験だったのではないでしょうか。

 人間は誰もが自己の思いを持ちます。管理力とはその日々の煩わしさや思いと異なる事柄に振り回されるのではなく、その思いを肯定的に解釈する力を磨くことです。その過程で正しく健全な考え方の基本が育っていくと、渡辺和子先生は述べられているのです。

 渡辺和子先生のご著書『置かれた場所で咲きなさい』というタイトルだけで、「そうだなあ」と合点し、それまでの不愉快な思いがとても素直な気持ちに変わります。その上で事実を直視してみると、問題の解決策のアイデアや可能性が見えてきます。

 つまり、ちょっとした言葉一つでわれわれは素直になり、素直な思いで見つめてみると、試練でさえ受け入れてみようという考えになるのです。実際、試練を乗り越えて、多くの人が「考える力」を身につけています。管理力とは、たとえ嫌な事柄でも、あえて「受け入れて挑もう」という考え方を自ら習慣化する力のことです。結果、「発展的な思考の展開能力」が向上します。

観察力・推察力・洞察力を磨き上げる

 渡辺和子先生のご著書はわれわれに訴えかけてきます。「現実が変わらないなら、悩みに対する心の持ちようを変えてみる」。まさに、思いが変わると考え方が変わり、新しい解決方法が見えてきます。考え方次第でマイナスがプラスに変わり視界が一変します。

 観察力を鍛えてください。何に対しても関心や興味を持ち、観察し続けて「考える力」を強化し、観察力のメカニズムを知ることです。観察する習慣を身につけるには、日々気づいたことをメモするのです。

 つまり、マネジャーにとって大切なのはその場の思いつきや空理空論ではなく、日頃からお客様の動向を見ながら、自社の商品やサービス、技術を客観化して、真にご満足をいただけているのかどうか、お客様の自社商品を見る目線や態度、表情を見つめるのです。また、職場の仲間や部下や上司、会社や社会の動きなどをたえず観察することが大切です。継続すると小さな情報も大きな束になります。

 その上で推察する力を身につけるのです。われわれは多くの「憶測」を「考えている」ことと錯覚しています。憶測とは、あいまいなデータや不確かな情報をもとに、いい加減に推測することです。

 そうではなく、観察したものを明確にデータ化し、論拠のあるものを情報化して、推測する力を加えて、その上でさらに深く物事の本質に迫り、意味を見いだすまで洞察して、推察する力を鍛えていくことで、考える力を強化するのです。物事の視野を広め高め、発展的に思考し、考えを思いめぐらせ、展開し、結果に結びつける能力を「考える力」といいます。その力を高めていく日々の努力が管理力です。

本記事は、月刊『理念と経営』2024年10月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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