企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
管理力
2024年8月号
「働き方改革」から「働きがい改革」へ
「備えあれば憂いなし」といいます。管理力は問題意識を持って備える力のことです。必ず「前兆」があり、気づくから「憂い」になるのです。常日頃から前向きな問題意識があれば誰もが憂い、心配します。管理力とは先憂後楽の精神で経営を革新する力です。
意思決定は「巧遅より拙速に」行う
どんな組織にも階層があり、最上位の社長は「重要な意思決定」の任務を担います。偉いのではなく、意思決定の最大責任者なのです。社長には逃げ道がありません。管理力とは社長を補佐し、時に諫言し、その意思決定に参画する力のことです。決定事項を果たすために次の管理階層に明確に伝え切る役割もあります。
組織は絶えず「変化する外部環境」に対応しなければなりません。変化を巧みに分析したり考えることは大事です。ただ、行動に移せない人は時間がかかり、「時、すでに遅し」になりがちです。
たとえ大雑把でも、即断即決の意思決定を「拙速」といいます。「拙速」は見たり、聞いたり、試したりすることで修正ができます。多少の失敗や批判があっても、あえてトライしなければ、結果として大きな脅威を抱えます。拙速は素早い行動が強みです。意思決定は「巧遅より拙速に」行うことで、目標達成率が高まるのです。
まず、走り・動くのです。行いながら考え、訂正し、推論を立て、軌道修正しながらゴールを目指すことです。中小企業が判断力に欠けるのは、実践のためのマネジメントになっていないからです。中国の儒者・王陽明は「知行合一」、すなわち「知は行いの中にある」と述べています。管理力とは「理論ではなく実践」であり、やってみて初めてわかることがたくさんあるのです。
また、管理力とは、すぐに判断し、着手し、成果をつくる力のことです。そのために先憂後楽の精神が必要です。先に憂い後に楽しむのです。
国に九年の蓄え無きを「不足」という
四書五経の『礼記』には「国に九年の蓄え無きを不足と曰い、六年の蓄え無きを急と曰う。三年の蓄え無きを、国其の国に非ずと曰う」とあります。日本国家でいえば、「財政問題」と同じ意味と解釈してもいいと思います。
簡単に訳文に触れると、その国の国民に対して、九年分の食料の蓄えのないのを「不足」といい、六年分の蓄えがないのを「急」(危険)といい、三年分のない国は真の国ではないということです。
昔、食料を生産していたのが農家です。必死に田畑を耕し、不作になっても大丈夫なように、節約しながら国民を守るために「蓄え」を大事にしました。政治を司る政治家だけに任せるのではなく、われわれ国民も考えなければならない問題です。
日本の財政がどのようになっているかご存じですか。少子高齢化の問題は、日本の財政にまで大きな影響を与えているのです。
財務省のホームページによれば、二〇二四(令和6)年の歳出総額は一一二兆五七一七億円です。そのうち税収は六九兆六〇八〇億円で、赤字国債は二八兆八七○○億円です。
この赤字国債の発行がなければ、予算は成立しません。その予算に対して、社会保障費は三七兆七一九三億円で、歳出総額の三三・五%にもなっています。普通国債残高は、累増の一途をたどり、二四年度末には一一〇五兆円に上ると見込まれています。
本記事は、月刊『理念と経営』2024年8月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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