企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

社長のクリエイティブ・ペアたれ

家庭用VTRにおけるソニーのベータとVHSの規格競争は厳しかったそうです。パナソニックHDの谷井昭雄第四代社長は、VHSの工場責任者として苦労を背負い込みます。「怯むな!」を合言葉に部下と共に耐え抜かれたからこそ、次の道が見えたのです。

経営幹部に必要なこととは

 経営幹部の管理力の発揮次第で、企業の盛衰は決まります。大きな時代の変化を明確に認識することが管理力です。現在、中小企業でも変化対応が強く求められています。

「気づき」のワークショップを三七年行ってきましたが、管理力の根幹には「WHY・WHAT・HOW(なぜ・何を・どのように)思考」を基本的に身につけることが求められます。会社の理念体系の理解、年度方針の意味合いを把握し、縦軸を基本にした成果達成のコミュニケーションと、関係性強化の横断的なコミュニケーションも重要です。

 経営幹部に必要なのは、自らの任務の遂行だけではなく、全体の状況把握力と判断力です。ドラッカー博士は、その上で①売り上げ・利益を上げ、②商品やサービスの価値を高め、③明日のための人財を育てることだと述べています。

 つまり、経営幹部は、三項目を達成する経営能力が求められているのです。第一は「売り上げ・利益」です。自分に与えられた責任部署で売り上げ・利益を上げられなければ、その部署は経営破綻した状態といえます。

 第二は「価値を高める活動」です。同じ商品でも日々新たに顧客価値を高めていかなければ、すぐに飽きられてしまいます。だからこそ社長と共に、「クリエイティブ・ペア」(お互いが共感し合い納得するまで話し合い、一人ではできない知的創造を生み出す人)として「気づき・創造性」を駆使して形にしていく力を管理力というのです。WHY・WHAT・HOW思考がなければ、クリエイティブ・ペアにはなれません。

経営幹部は誰よりもWHYを理解せよ

 九六歳の谷井元社長は、こうおっしゃいます。

「自分はどれだけ熱心だったろうか。自分はこういう役割を担っている。自分はどれだけ熱心にやっているか、自分で自分のことを正しく評価する。そして自覚する。人間は成功するばかりじゃない。間違いのほうが多い。あのときもっとこうしたらよかった。そう思うことが多かったな」

 谷井昭雄氏が、社長に任命されたのは、ドラッカー博士がいう売り上げ・利益だけの結果ではありません。わかりやすく一番に売り上げ・利益を位置づけていますが、顧客価値を絶えず高め続けてこその経営幹部なのです。事業部長は事業部の、支店長は支店の、営業所長なら営業所の「自分は経営者なのだ」という認識に基づけば、もっと知恵も出る。もっと気づきも高くなる。もっと素早く着手し成果をつくれるはずなのです。

 管理力とはWHYの理解です。経営幹部一人ひとりが、経営者の視点で「自社は何のためにこの事業を行うのか?」「その目的は何か」を真剣に考えなければ、ベストな計画は生まれません。私はPDCA管理のPにはプランの上位概念にパーパスがあり、それを起点としてプランニングする必要性があると説いています。

 人はWHYが明確になった分しか実行に移しません。目的志向の欠如があらゆる判断を狂わせるのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2024年6月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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