企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

リーダーは率先して逆境に立ち向かう

社長力でも述べましたが、仕事に熱意を持つ働き手の割合が世界一四五カ国のうち日本は最下位です。なぜ、人生の背骨ともいうべき仕事に熱が入らないのか。管理力の最大の危機は「働かされ感」です。なぜ働かされ感が生じるのか、一緒に考えてみましょう。

数年前までは社会に関心を持っていた

 社会に関心を持つことはとても大切です。なぜなら一人ひとりの人生に多くの恩恵を与えてくれているからです。健康社会学者の河合薫氏は「数年前までは、まだ、人々は社会に関心を持っていました。(中略)あの頃は社会に『私』があったし、『明日は我が身』という危機感があった。(中略)ところが今はどうでしょう」と、鋭い問いかけをしています。

 私はドラッカー博士の「企業は社会に存在する問題・課題を解決するための社会の一機関である」という考え方を基本として、すべての教育カリキュラムを作成してきました。仕事は経済的価値だけではなく、社会的価値を生み出していかなければなりません。

働かされ感は「主体性の欠如」から生まれる

 私はOJT支援ツール「グロースカレッジ」の番組を誇りに思っています。

 現在、約一〇〇〇番組があり、「ジョブナレ」は知識・意図・方法・職業の基礎教育です。「ジョブナビ」は自社の仕事に関して、年度方針・月次方針や朝礼冊子「13の德目」と連動した「週次の方針」「週次の優先順位」「週次のPDCA」を回すツール、日報機能、模範となるスタッフの登場、採用、教育、階層別OJTなど、たくさんの動画を活用し、オペレーションやマネジメント全般の仕事におけるスキルアップを支えています。

 習得するのに三年を要していたスキルやコンピテンシー(仕事能力)は、六カ月で完全にマスターできます。

 月刊『理念と経営』の設問の答えやPDCAは管理者が赤ペンでコメントバックします。私の発見は、入社一年目の社員さんが、動画に沿って一年間の業務を学び、一年上の先輩社員がそのスキルアップを見届けている点です。

 私はスタンフォード大学の客員研究員だったとき、「採用・教育・リテンション(保持・維持)・イグジット(退職)」といった懇切丁寧な一連の流れを学び、とても驚きました。日米の格差は人財育成の差です。自己成長欲求・貢献欲求が高いうちに、それらを満たしてあげることが肝要です。

 河合薫氏は著書の中で、同級生が集まったときの体験を述べています。話題はもっぱら仕事のことで、「人手不足でひどい働かされ方をしている」「娘が入った会社が、結構なブラックでさ……」など、〝昭和のおじさん、おばさん〟は大いに盛り上がったそうです。

 すると、海外赴任から帰国した同級生の方が、突然、切り出されたそうです。「ねぇ、さっきから言っている『働かされている』ってどういうこと? 自分のありたい姿に近づきたかったり、成長したかったり、たくさん稼ぎたいから働くのでしょ。なんで働かされなきゃならないの?」

 河合薫氏の結論はこうです。「『仕事は人生を豊かにする成長の場』という共通理解が社会にあるからこそ、働く人は主体的に動き、会社はいくつもの教育プログラムを用意し働く人に投資する。働く人にも経営者にもそれぞれ義務があり、それぞれが責任を果たせば会社も働く人も成長します」

本記事は、月刊『理念と経営』2024年5月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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