企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

誰もが貢献したい気持ちを持っている

「売り手、買い手だけやのうて、皆がようなるのがええ商いだす」という、サントリー創業者、鳥井信治郎氏の考えからすれば、今という時代は管理力を試す大きなチャンスです。チャンスと捉えて困難に挑む力を管理力、全社をまとめ統合する力を可能思考能力といいます。

共感力の発揮こそが気づきの源泉

 人間は本能的に貢献意欲を持っています。だからこそ、まず、自らの能力開発が重要です。その能力が発揮されなければ貢献はできません。能力には自分でも意識しない「潜在能力」と、現在職場などで発揮しているスキル、知識、実行力、対人関係など、実際に成果と結びついている「顕在能力」の二種類があるといわれます。潜在能力と顕在能力を合算すると人間の能力はほとんど同じだといわれています。

 つまり、貢献したい気持ちを行動に移し、どう貢献すればお役に立てるかが大切なのです。そのために、人間力を磨くことが優先されます。お客様が何に困りどんな夢をお持ちなのか、合理性だけでは気づけません。共感力の発揮こそが、お客様の欲求に気づく力の源泉になります。

 鳥井信治郎氏は創造力や発想力にあふれ、「やってみなはれ」の精神で次々に新しい製品をつくりあげました。成功のポイントは深く考え、すぐに着手し、失敗を重ねながらも挑み続けたことです。考えただけではわからない答えが、実践によってわかるようになっていく。つまり、管理力とは「やってみなはれ」の精神のことです。

 ドラッカー博士は著書の『われわれはいかに働き どう生きるべきか』で、「仕事は人生のすべてではない。しかし、仕事は第一義である」と述べています。仕事を通して社会に貢献し人間力を高めていくのです。また、仕事力とはわれわれの精神活動を崇高にし高度化してくれるものです。そして、やってみて成果をつくりあげたときに、感謝力が生まれます。鳥井信治郎氏は母に似て、見えないところで陰徳を積み、多くの学徒を育てています。



冒険者としてのチャレンジング精神

 サントリーのホームページには、「研究開発一〇〇年の歴史―やってみなはれ精神が生み出したフロンティア製品」が創業期から記録されています。

「現状に甘んじることなく、異分野・新しいことへの挑戦を続ける。ここに、『結果を怖れてやらないこと』を悪とし、『なさざること』を罪と問う社風に根ざした」、歴史に残る商品が完成しているのです。

 そして「創業者鳥井信治郎は、どんな苦境に陥ちこんでも自身とその作品についての確信を捨てず、そして、たたかれてもたたかれてもいきいきとした破天荒の才覚を発揮しつづけた人であった。それを最も端的に伝える言葉として彼がことあるごとに口にした日本語が『やってみなはれ』である。冒険者としてのチャレンジング精神がサントリーのDNAとして創業一〇〇年以上経た今もなお、生きている」と記されています。

 そのフロンティア製品として、まず、一九〇七(明治40)年に生まれた甘味葡萄酒の「赤玉ポートワイン」があります。松下幸之助翁が丁稚時代、ポートワインの入った瓶の輝きに感動した頃のことです。一九二九(昭和4)年には国産第一号ウイスキー「白札」ができあがっています。五一年後の一九八〇(同55)年には、「サントリーオールド」の年間出荷量が一二〇〇万ケースを超え、世界蒸留酒市場でナンバーワンになっています。

本記事は、月刊『理念と経営』2024年3月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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