企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

未来を託せる「モデル」をつくれ

管理力とは、幹部がモデル(お手本)となることです。お手本が少なくなった会社や企業は部下が育たない社風になります。誰をお手本にするのか、部下はそのモデル像を無意識に求めています。生きる力、ビジョン、ミッション、パッションが管理力です。

オキモト名誉教授の「You pay the price」

 管理力とは単に優しいとか寛容とかだけではなく、部下を立派に育てる能力のことです。そのために率先して自らも人間力・考える力・仕事力・感謝力を磨く必要があります。

 うまくいっている幹部に「学生時代の恩師は誰でしたか。名前を覚えていますか」と質問すると、素早く答える方が多くいます。さらに「その恩師の価値観にどのように影響を受けていますか」と尋ねると、その答えは非常に明確です。「今の自分があるのは恩師のおかげです」と即座に返ってきます。仕事の上でも無意識のうちに価値観(判断基準)形成に大きな影響を受けているのです。

 社長力ではスタンフォード大学のダニエル・オキモト名誉教授について述べました。著書の『仮面のアメリカ人』(サイマル出版会)によれば、太平洋戦争の最中、日本人収容所で生まれた日系二世で、少年時代には「ジャップ」という差別用語でいじめられ、悔しい思いをしながら「自分には学問で努力する道しかない」と決断します。

 あえて難関校に挑んで勉強します。多様性の時代ですが、管理力とは「まず一つのこと(例えばマネジメント能力)を徹底して学び、基礎基本のスキルを身につけ、素早く実行してみる力」のことです。オキモト名誉教授は、アイビー・リーグの名門校の一つ、一七四六年創立のプリンストン大学を目指します。ビジョンを一つに絞り、ミッション(使命)を明確にして、パッション(情熱)を傾け、ディシジョン(意思決定)します。道は拓けます。米国には「You pay the price(代償を払え)」という有名な格言があります。代償なくして成功なしです。オキモト名誉教授はスタンフォード大アジア太平洋研究センターの責任者となり、中曽根康弘元総理の日米関係のアドバイザー的役割も担っていました。

田中元総理の号令で教員の給料大幅アップ

 小学校の恩師・武尾嘉明先生のことを社長力で述べました。〝でもしか先生〟は誰もいなかったと思います。ただ、給料が安かったことは事実でしょう。先生が宿直を度々されていたのは、宿直代を稼ぐためだったのです。「産経抄」は、次のような文章で結んでいます。

 「そんな風潮に危機感を抱いたのが、昭和四七年に政権の座についた、田中角栄首相(当時)である。『学校教育で一番大切なのは義務教育だ。公立の小中学校にいい先生を集めるために給料を上げろ』。田中氏の号令の下で、二年後には人材確保法が制定された。教員の給料は大幅にアップした」

 さらに産経抄は短く田中元総理の言葉を紹介しています。

 「小学校のとき、かわいがってくれた女の先生のおかげで総理大臣になれた。小学校卒の学歴だった田中元首相、周囲によく語っていたという。教師は生徒のその後の人生に大きな影響を与える、そんな仕事に魅力を覚える若者はいまでも少なくないはずだ」

本記事は、月刊『理念と経営』2023年10月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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