企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

日本は、一人のミスを集団で補ってきた美しい国だった

「百年の時は一瞬にすぎない。君たちはどうかいたずらに時を過ごすことのないように」と吉田松陰は述べています。立派な管理者になり人生を豊かにしていくために、無駄な時間を少なくし、前を向いて進まなければなりません。

日本は、一人のミスを集団で補ってきた

 故木野親之氏は、松下幸之助翁との思い出をこう述べています。
「『木野君、成功する人は日々の些細なことに注意を払い、基本を遵守するという二つの側面を持っているものだ』。これも松下幸之助に強く教えられたことの一つです。仕事に成功するには、小さなことと、大きなことの基本的な考え方の二つが大切です。平凡なことを疎かにしたり、小さな事柄を馬鹿にしたりしていては、成功は逃げて行ってしまうのです」(木野親之著『松下幸之助に学ぶ指導者の三六五日』コスモ教育出版)
 二宮尊徳翁も「大事を為さんと欲せば小なる事を怠らず勤むべし、小積もりて大となれば為ればなり。凡そ小人の常、大なることを欲して小なる事を怠り、出来難き事を憂いて出来易き事を勤めず、其れ故大なる事を為すこと能わず」と、まったく同じことを述べています。
 管理力とは部下の「人間力・考える力・仕事力・感謝力」を引き出す力のことです。今や物の道理が厳しく問われ、世界情勢の激変と物価の高騰、生産人口の減少や少子高齢化の時代です。吉田松陰が生きた時代のように、自己責任・自主性・主体性が必要不可欠です。
 日本は豊かになって、その代償としていろいろなものを失いました。一つは自己責任意識です。日本は共同体組織であり、一人のミスを集団で補ってきました。美しい国だったのです。

吉田松陰が挙げた指導者の四条件

 しかし、経営者も経営幹部も行政も、いつの間にか「人頼り」「国頼り」になり、自らの努力不足で起こしたものでも、さまざまな制度に依存してきたような気がします。義務の履行を後にして権利の主張が先に来る社会を、スペインの哲学者、ホセ・オルテガは嘆いています。
 当時のスペインは凋落し、一時世界の海を制するような勢いだった国の誇りも精神性も、一八九八年米西戦争で敗れたことで失いました。自己責任や危機感欠如の結果として、今や日本も"失われた三〇年"どころか、デジタル社会になっても、自社のビジネスモデルを革新する積極性を失っています。
 あなたが、マネジャーとして事を成すにあたり、「目的-準備-計画!目標-具体的手順→徹底した実践」の、そのいずれが欠けても物事の成就はありません。日本の生産性が低いのは、オペレーションに不備があっ
たり、それを発見して具体的に手順を変えたりといった、マネジャーの「マネジメント学習」があまりなされていないからです。
 お粗末の最たる事例が、山口県阿武町の「四六三〇万円」の振り込み間違いです。ハ夕(傍)を楽にすることが「働く」の定義ですが、とんだ不始末をした人は「働いた」のではなく、ハタに大きな迷惑をかけたので
す。町長は謝罪会見をし、マスコミ各社は走り回り、町民も説明に駆り出され、大勢の時間を無駄にしました。これを労働時間に換算すると、どれだけコストがかかったのかがわからないくらい、膨大です。
 ところが、間違いを起こした町の職員にはきちんと給料が支払われています。ハタに迷惑をかけたペナルティは一体どうなっているのでしょう。その上、住民説明会で副町長が出したスライドに、「四六〇万円の振
り込み」と書いたミスがあり、このお粗末な二重ミスに、住民は怒り心頭でした。
 民度が落ちているのではないか、日本人の働く意義に対する意識が下がっているのではないか⋯⋯つまり、マネジメントに対する指導者の自己責任が希藏になっているのです。吉田松陰は指導者の条件として次のように、述べています。①志を持て、②知識を磨け、③気力を養え、しかし、それだけでは学者にすぎぬ、真の指導者は④徹底して行動せよーー。言い得て妙です。

本記事は、月刊『理念と経営』2022年8月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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