企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

適度なストレスは能力を倍加させる

知床の観光客の事故は大惨事になりました。人の命を預かっているという任務を忘れて、安易な出航の指示が招いたものです。管理不足で済む問題ではありません。最大のミスは間接の努力の欠如です。安易な判断が多くの命を奪ったのです。

真の努力とは「準備」にある

 知床の大惨事は管理不足だけではなく、与えられた任務や責任感の欠如が原因です。社長が何回記者会見して原因を説明し、何百回土下座しようと尊い命は戻ってきません。お亡くなりになられたり、行方不明の方のご家族の悲しみや憂いに言葉がありません。
 しかし、知床の観光船のような問題が自社にも存在しないか、社長も経営幹部もこの際、真剣に考えてみるべきです。報道によると、原因は船体にヒビが入っており、同業の船長たちが「これは危険じゃないか」と言っていたそうです。自社に置き換えれば品質管理の問題であり、安全管理、つまりマネジメントの問題です。
 ①報告すべきを報告しない、②確認すべきを確認しない、③すべきを反省しないで、④結果的にお客様に迷惑をかける。これらを他人事として看過してはいけません。社長力でも述べたように、真の努力とは「準備』にあるのです。
 事が起きて人様に迷惑をかけてから、善後策を百策議論しても亡くなった命は返ってきません。われわれのマネジメントの失敗は知床の観光船事故ではなくとも、管理力の甘さは必ず社長の土下座を実際に生み出します。PDCAサイクル、5W3H思考、報告・連絡・相談・確認の欠如は、日頃の訓練不足や気づき不足から生まれているのです。
 つまり、管理力とは、の事が起きる前に事前の対策を具体的に練る力であり、②それをまとめる社長や取締役の経営会議や、プロジェクトチームのチーム会議にあり、③正しく実行することにあります。④資料な準備(間接の努力)が、お客様の満足や自作りから質問に対する回答までの、⑤緻密な準備(間接の努力)が、お客様の満足や自社の成長発展につながるのです。
社の成長発展につながるのです。

自社に「準備不足」はないか、問いかけよう

 日本人は「なぜ努力するのか」を忘れています。そういう風潮が社会全体に漂い、努力はマイナーなことだという価値観の国と化していあるように思います。
 われわれが行うEラーニングには「働くってなあに?」というチャンネルと番組があります。簡単にいえば、働くとは「ハタ(傍)を楽にする」思考・感情・行為・行動のことです。その逆が「ハタに迷惑をかける」ことです。この観点から、努力をする目的は、人も自分も「楽にする・幸福になる」ための準備です。
 知床の観光船事故は、準備不足により多くの命を奪いました。運航会社に憤りを感じますが、さらに踏み込んで、自社にも日常の業務遂行に同様の「準備不足」がないか、真に間接の努力(準備)をしているかを問うべきです。
 誰もが本能として貢献意欲を持ち、貢献度の高い人生を送る機会が与えられています。イギリスの有名な著述家サミュエル・スマイルズは、次のように述べています。
 「われわれ人間には、『自分の意思で自由に行動する』という貴重な能力が与えられている。これは、自分の人生の逆境を見事に乗り越えた多くの人々が――あるいはどん底の生活から身を起こし、目標をしっかり定めて精力的に働いた結果、自分を向上進歩させ、あわせて世の中の発展にも貢献した人々が――身をもって実証してくれている」(サミュエル・スマイルズ著/竹内均訳・解説『努力の法則』三笠書房)

本記事は、月刊『理念と経営』2022年7月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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