企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

障害の数だけ、苦労した分だけ、成功がある

テレビ報道で「稽古だけが夢を叶える」と答えた若手力士がいました。おそらく、入門当初、体の細かった白鳳関が、日本相撲界を代表する横綱になった姿をイメージしていたのでしょう。われわれは素直にこの若手力士に学ぶべきです。

次世代の未来を考えてほしい

 アメリカのーT五社のGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)の時価総額が、今年七月末に日本の名目GDP(国内総生産)を超えました。また、シリコンバレーの電気自動車メーカー、テスラは、時価総額で日本のトヨタ自動車を抜き、世界一位になりました。OECD(経済協力開発機構)加盟国の一人当たりGDPランキング(2018年)では、日本は三六カ国中一八位です。かつてはアメリカに次ぐ水準でしたが、どんどん下がっている状態です。
 こうした現象を見たとき、経営幹部の立場だけではなく、皆さんの子どもたちの未来の姿を考えてみましょう。われわれの世代はいいとしても、このままでは次世代に悪い影響を及ぼします。
 かつての栄光に酔うのではなく、子どもたちのためにも次世代のことを考えるべきです。一部なのでしょうが、政治の指導者層の政治哲学の無さ、国を思う志の低さ、経済界の問題意識の希薄さ、学校教育の甘さなどが目に余ります。大人であるわれわれが、冒頭で紹介した力士の無意識に発した「稽古だけが夢を叶える」という言葉に素直に学ぶべきではないでしょうか。
 これは、幕末・明治の洋学者、中村正直がイギリスからサミュエル・スマイルズの原著『自助論(セルフ・ヘルプ)』を持ち帰り『疎盛出志織』として世に出した「天は自ら助くる者を助く」の精神とまったく同じことです。私を含めて多くの人が稽古不足のように思います。

学んでは力強く踏み出した幸之助翁

 日本中が新型コロナ問題で揺らいでいます。特に経営幹部の皆さんは、働く人たちを守ろうと努力していると思います。
 かつて、松下電送の社長でもあった木野親之先生は一九五一(昭和26)年、松下幸之助翁が身元引受人という形で松下電器産業(現パナソニック)に入社し、経営幹部時代は大いに活躍。わずか三五歳で債務超過の東方電機の社長として再建を出されます。
 苦心惨憺の末、再建しただけではなく「G3ファクシミリの国際標準化」にも成功しました。当時の経済界には、日本経済という大局を見据えた探究心旺盛な方々が多かったと思います。
 木野先生は幸之助翁との日常会話を回想し、次のように述べておられます。
「人生における成功の姿は、『予知出来ない障害を乗り越え、自分に与えられた道を、着実に歩んでいくところに現れる』松下幸之助の人生そのものです。幸之助は『障害の数だけ、苦労した分だけ、成功がある』と、真剣に人生に向き合っていました。そして、『夢の数だけ希望が生まれた』と、学んでは力強く踏み出していたのです」(木野親之著『松下幸之助に学ぶ指導者の三六五日』コスモ教育出版)

本記事は、月刊『理念と経営』2020年10月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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