企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

トップや幹部の熱意以上の部下は育たない

「野村野球」は単に才能だけを評価しません。楽天時代、野村監督の独特の「ぼやき」がなかったら、「マー君」こと田中将大選手と嶋基宏捕手との“名バッテリー”は生まれず、マー君の現在の栄光もなかったかもしれません。二人にはプロとしての誇りがありました。

なぜ、ぼやくだけで直接注意しないのか

 野村監督の采配をNHKのドキュメンタリーで見ました。マー君のプロ野球のデビュー戦は無残な結果でした。ぼろぼろに打たれてしまい、二回途中で降ろされてしまいます。天才的才能があるマー君でも、プロの世界の洗礼は非常にシビアなのです。
 それに比較して大企業を含めた企業の新入社員たちは、こういう洗礼は受けません。今年の新卒者はまだまだ売り手市場であり、新型コロナうぃするの衝撃はありましたが、実に庇護されて入社した人たちも多いと思います。
 つまり、日本の企業社会にはマー君が受けた厳しい洗礼はないのです。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』と世界にもてはやされ、すっかり有頂天になった政界や経済界のリーダーたちは、バブル経済という砂上の楼閣を生み出したにもかかわらず、あまり反省をしないまま「失われた30年」を過ごしました。昭和の遺産を平成で食いつぶし、令和の遺産まで先食いしていると指摘する人もいます。
 財政赤字、産業構造、中国依存、教育格差などが問題視されていますが、日本のこの急激な気の緩みは、希望を持った若者たちの不安を煽るものだと思うのです。
 番組で野村監督に質問した人がいました。「野村監督はぼやくだけで何故直接注意しないのですか?」という内容です。私が感動したのは、その答えです。
 「彼らはアマチュアじゃない。プロというのは人に言われなくても敗因を自分で考えるものだ。野球は実践・実績の世界なのだ。結果がつくれなければ戦力外通告になる」

プロ選手を育てる独特の「ぼやき」

 管理力とは個人の才能を活かして組織をまとめる力のことです。そのために、野村監督は「基礎・基本・応用」の手順で、癖の強い選手を次々と教育していくのです。マー君がぼろ負けしたときの「ぼやき」は、「投手は闘争心や。勝とうという気持ちで投げていると他も引っ張られる。気が大事なのだ」でした。それに応えようとプロも真剣に訓練します。
 企業経営に置き換えて言えば、トップや経営幹部の熱意以上の部下は育たないということです。管理力とは、「何が何でもお客様に喜んでもらう熱意」「部下を育てる熱意」「考えて、考えて、考え抜いて、具体的に結果を残す熱意」のことです。熱意なきところに知恵も創造性も生まれません。
 野球も経営もまったく同じです。野村監督は、自分がやり抜いてきた実践論として、人間性を磨く基礎が需要だと述べ、基本を教え、ようやく応用を指導するのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年6月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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