企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

斧を研ぐ「関節の努力」をどれだけしていますか?

本来のなすべきことにベストを尽くさなくては、物事は成就しません。リンカーンは少年時代、木を切るとき、まず斧を必死に研いだそうです。自己を磨く、修練すると同義語で、この「斧を研ぐ」行為が重要なのです。

孤独をエネルギーに変えた幸之助翁

 管理力は企業経営の栄枯盛衰のカギを握っています。幹部はポストを与えられればその場で権限のある立場になりますが、本来経営者が託すのは「経営の手助け役」に対する信任です。「信」とは与えられた任務を、誠をもって執行するものです。「任」とは通常、そのポストに備わる重要な任務のことです。
 「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助翁は「自分の成功は高橋荒太郎さんの存在」と、経営の補佐役の大切さを素直に語られています。企業は社長だけで経営できず、ベストを尽くす人が必要なのです。
 戦後まもないころですから、幸之助翁が相当ご苦労されていた時代かもしれません。滋賀県の大津の旅館に泊まっていると、突然部下が現れました。日頃から喧嘩っ早く気性が激しいその社員は、その日も争って、自分の胸のうちを聞いてもらいたく探し当てて来ていたのです。
 幸之助翁は「どうしても聞いてほしい」と涙ながらに訴えるその社員の不満をお聞きになられます。経営の神様はひたすら耳をそばだて、うなずき、すべてを聞き終わった後にぽつりと言われます。
「君は幸せやなぁ。それだけ面白うないことがあっても愚痴をこぼす相手がいる。僕にはそんな人はいないんや。君は幸せや」
 必死にベストを尽くしている幹部ほど、この短い言葉の真意に共感することができるでしょう。社長は孤独な側面を持ちます。何事も一人ではやっていけない。だから経営幹部が必要なのです。

“分かれたる”状態から衰退が急激に始まる

 アメリカ合衆国第十六代大統領のリンカーンは、奴隷制度でアメリカが南北に意見が分かれたとき、「家が内輪で分かれて争うなら、その家は立ち行くこともないであろう」という演説をしました。この月刊「理念と経家」では、社長力・管理力・現場力の三位一体論を説き続けていますが、国も企業経営も、三位一体で激変の時代を乗り切らなければならないのです。お互いが本音で議論し合い、自分の至らぬ部分は素直に受け入れることも大事です。判断基準は「お客様の満足」「企業の永続」「働く社員さんの幸福」です。
 よく、意思決定できない人がいます。それは、経営の何たるかを知らない、ポストだけで実績の伴ってない人に多く見受けられます。手を打つのが遅れたり、やるべきことがいつも曖昧だったり、ベストを尽くしていない企業は、早晩衰退していくのです。歴史を見ても、リンカーンが言う「分かれたる家」の状態から国も企業経営も衰退は急激に始まるのです。
 奴隷制禁止か否かで国は南北に二分されます。リンカーンは「『分かれたる家は立つこと能わず』、わが国も、半ば奴隷、半ば自由の状態で、永続することはできないと私は信じる。この連峰が瓦解すること—一家が倒れること—を望まない。私が期待することは、この連邦が分かれ争うことをやめることだ」と主張します。相争う中で、リンカーンも孤独を感じていたのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年5月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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