企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

向上心や学習熱は周囲にプラスの影響を与える

管理力とは、スピルオーバー効果を社内に生み出し、会社一体となって「すぐやる習慣」を身に付ける社風にする力のことです。ただ、人間には「強いブレーキ」もあり、組織そのものや経営幹部がそれをつくり出している場合もあります。

スピルオーバー効果とは何か

  スピルオーバー効果とは、拡散効果とも呼ばれるもので、あらゆる分野で活用されている考え方です。例えばグーグルのGPS(衛星利用測位システム)から送信される位置情報が、ある一定の領域に流されたとします。しかし、その枠外でも無料送信地図は活用されます。つまり、想定していた以上にその効果が拡散されるわけです。私はセミナーや講師派遣の企業内研修でも「スピルオーバー効果」を、社風形成やモチベーションの連鎖になぞらえて講義しています。
 つまり、社長が熱心に学ぶと、その領域を超えて経営幹部の学習熱にプラスの影響をもたらし、経営幹部が向上心を持って学び熱心に仕事をするだけで、働く社員さんの向上心や学習熱にも火がつく、そういう効果のことを言います。学習する組織はこの仕組みができているのです。
 さらに家庭でも、父親である社員さんの熱意が子どもにも拡散し、会社での一人の情熱や考え方がスピルオーバー効果として家族にも拡散されるのです。「すぐやる習慣」「結果にコミットする習慣」「結果をつくる習慣」は、社長や経営幹部から派生して拡散させなければなりません。
 脳に関するいろいろな書物を読むと、脳は一種のコピー機のようなもので、周囲の人や尊敬する人の態度やしぐさ、考え方、生き方まで複写するようです。逆をコピーすることもあり、“朱に交われば赤くなる”のです。スピルオーバー効果が逆の場合、「すぐやる習慣」よりも「ぐずぐず癖」として拡散されます。組織そのものが抱える最大の問題です。管理力とは、経営幹部が「すぐやる習慣」を身につけて模範となり、拡散することなのです。

達成の喜びや承認が報酬になる

 ほとんどの人間は、恐れと快楽を基軸として動きます。恐れも度が過ぎると「コルチゾール」という脳内物質を分泌し、よくありません。快楽も、怠けたり、手を抜いたり、一時的な虚偽の報告をしたり、酒や悪い遊びにふけったりすれば、必ず後々の後悔を生みます。
 「すぐやる習慣」を身につけるには、結果をつくって達成の喜びを自分も部下も体験し、その上でお互いが承認し合うことです。それが最高の喜びとなり、報酬になるのです。喜びや報酬は人間の本能的な快楽です。
 社長は「経営革新をしてさらに競争優位を身につけておかなければ」とか、「どういう人材を育成しておくべきか」とか、「どのような顧客価値を生み出すか」などを模索し、幹部にも絶えず要求を突きつけます。こういう激変の時代には、どんな人も焦りを持ちます。これは自社の保存本能が危険にさらされているという、社長にしかわからない危機感なのです。
 特に「すぐやる習慣」が希薄な企業では、社長の危機感は過剰になりがちです。だからこそ、今の大きな時代の変化をキャッチし、いつでも、どこでも、何にでも好奇心を持って情報を集め、幹部自身も事前に危険をキャッチして、問題が起きないように策を練ることが求められます。それを管理力と呼ぶのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年4月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

成功事例集の事例が豊富に掲載
詳しく読みたい方はこちら

詳細・購読はこちら

SNSでシェアする

無料メールマガジン

メールアドレスを登録していただくと、
定期的にメルマガ『理念と経営News』を配信いたします。

お問い合わせ

購読に関するお問い合わせなど、
お気軽にご連絡ください。