企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

上司の努力する姿が「信頼関係」を強固にする

ノーベル化学賞を受賞した吉田彰さんは、記者会見に臨んで示唆に富んだ意見や感想を述べています。以前は夢や将来に対する「なりたい理想像」を持った人が多くいました。管理力とは働く人々に希望の灯をともすことです。

吉野さんの心に灯をともした“恩師”

 吉野彰さんのノーベル化学賞受賞後の会見で、『朝日小学生新聞』の記者が質問をしています。化学にどのように興味を持たれたのか-と。今回の受賞が化学好きの子どもたちに大きな夢を与えられたことから、子どもたちへのメッセージの一言を求めたのです。
 その答えが、吉野さん自身の体験から出たもので、非常に感動しました。突き詰めて考えれば、小学校の恩師の影響です。「子どものころ、誰かにきっかけを与えられて、自分の将来の道を決めていくような時期は必ず来ると思うのです。」と述べておられます。
 吉野さんの心に灯をともしたのは、小学校三、四年生の担任だった女性の先生でした。化学出身の先生で、授業の合間、合間に「化学、化学」という言葉をつぶやき続けたそうです。そして、『ロウソクの化学』を読みなさいと言い、吉野少年は実際それを読んで、無意識のうちに化学に関心を持つようになっていきます。
 ろうそくはなぜ燃えるのか、なぜ炎は黄色いのか、なぜ芯はあるのか―。子どもの心に次第に化学に魅せられていきます。仮に、その先生に出会っていなかったら、吉野さんは平凡なサラリーマンで終わったかもしれません。
 管理力とは働く人への前向きな感化力です。リーダーシップというよりも、部下を持つ者の義務は、部下の人生に前向きな影響を与える力のことです。部下の人生を考え、上司が自ら管理力を磨くことで、結果的に部下は健全に育ち、やがて、人間力・考える力・仕事力・感謝力を持った、立派な人物として、目標達成能力を身に付けていくのです。

リチウムイオン電池はわれわれがつなぐ!

 吉野さんの受賞発表の際、旭化成の社員さんたちから大きな拍手や歓声が上がった場面がありました。吉野さんはそのとき、記者団の質問に答え「ノーベル賞受賞より、自社の社員さんが感激してくれ、自社を誇りに思う姿が一番の喜びだった」と述べました。
 産業界からのノーベル化学賞受賞は二人目で、島津製作所の田中耕一さん(2002年)に次いでのことです。あのときも国民の多くが歓喜の声を上げました。
 旭化成の社員さんは涙を流した方も多く、心から自社を誇りに思ったようです。そればかりか、「リチウムイオン電池はまだまだ社会に貢献できるから、われわれがつないでいかなければならない」と、自らの責任を明確に宣言する光景おもあったようです。
 管理力とは、自社の社員さんたちに喜びや誇りを与える力のことです。どんな会社にも必ず長所や強みがあります。それらを伝え続ける力が管理力です。
 「そうか、自分の会社はいろいろな問題もあるけれども、お客様にはそういう大きな貢献をしているのだ」、あるいは「自社がなければお客様は困るのだ」と、明確に部下に対して自分なりのビジョンや使命を語るのも管理力です。そして部下が幹部を誇りに思い、彼らの生き方の、目標となるような力量を磨く力のことなのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年2月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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