企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

人財を育て、「正しい規範を守る社風」をつくれ

グローバルな厳しい時代には、自分の城は自分で守り、まずは社長・幹部が一体となる必要があります。お互いに自社のために意見を述べ合い、組織への貢献が求められる今、社長も幹部もセルフ・アウェアネス(自己への気づき)が大事です。

将来を社長一人に任せず夢を語り合う

 NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる!』が評判です。時事問題も取り上げ、五歳のチコちゃんの質問に答えられないと、大物出演者でも「・・・・・してるんじゃねーよ」と、実に厳しく叱ります。普通の企業ならパワハラに近いくらいグサッときます。
 一番の殺し文句が「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と、核心をついた指摘です。この番組を見ながら、今の日本にはこの言葉を伝えなければいけない事柄がたくさんあると感じました。お年寄りを欺くような、かんぽ生命の保険の不適切販売などは、チコちゃんに「弱い人を騙すんじゃねーよ!」と叱ってもらわなければいけません。
 管理力とは企業を守る力のことです。つまり、組織としての一番上の上位概念は社員さんを守ることであり、その社員さんを雇用する組織を守る役割が管理力です。社長・幹部・現場の“三位一体”とは、幹部や社員さんが「社長一個人」を守ることではありません。社長と一緒になって第一に健全に組織を守り、夢のある組織、モチベーションの高い組織、人が育つ組織にしていくことです。結果として業績は良くなります。社長も給料で生活しており、まさかの時には一家離散という悲劇が待ち構えている存在です。
  部下を育成して、成果をつくり、お客様の満足を生み出して、将来を社長一人に任せっきりにするのではなく夢を語り合うのです。チコちゃんに「夢も持たずに生きてんじゃねーよ!」と叱られないように・・・。

封建社会においても王をいさめる人がいた

封建社会は、一人の権力者が蛮勇を振るうという印象があります。しかし、国を良く治めることができた時代は、権力者をいさめる者がいて、あえて王に対しても意見を述べました。そういう制度が古代中国の殷や周の封建社会にも整っていたので、平和な時代が続いたのです。いさめる者を刑に処したりした王は、必ず滅亡し悲劇を迎えています。
 韓非子という人は、「国、常強無く、常弱無し。」法を奉ずる者強ければ則ち国強し。法を奉ずる者弱ければ則ち国弱しと述べています。これを企業経営に例えれば、「会社は常に繁栄することはなく、常に衰退するということもない。唯一、人材が育ち正しい規範を守る社風があれば繁栄し、それが希薄になったら、会社はすぐにでも破綻してしまう」ということです。
 管理力とは、自分の保身を図って社長にこびることではありません。会社の永続を危うくさせることがあれば、それをいさめる勇気や知恵が要るのです。私を含めて長年トップを務めていると、どうしても自分自身が見えなくなります。社長自身も会社にとって良かれと思って意思決定していますが、誤るような場合は、私心を捨てて公事のためにきちんと意見を述べるのが管理力です。
 そのためには、自らの任務を果たして信頼を得なければなりません。チコちゃんに「媚びへつらうんじゃねーよ!」「部下を放っておくんじゃねーよ!」と叱られないように・・・。あるとき、ゲストの大竹まことさんに対し「ボーっと年取ってんじゃねーよ!」「それっぽいこと言ってんじゃねーよ!」と叱った場面では、五歳のチコちゃんは辛辣でした。
 二〇二〇年(令和2)年以後の答えのない時代のリーダーは、セルフ・アウェアネス(自己への気づき)が必修の課題であると、立教大学の中原淳教授は述べています。
 管理力とは自己への気づきの能力です。過大評価や過小評価するのではなく、正しく自己認識をする。ところが、人間にとって自己認識は至難の業なのです。経営者の多くが自分は平均以上の経営能力を持っていると信じています。幹部も同じように自己を過大評価しています。

本記事は、月刊『理念と経営』2019年11月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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