企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

惑いや苦悩と覚りは紙一重で、悩みは道を求めている証しである

あなたは経営幹部として真に学んでいますか。"近江聖人"と言われた中江藤樹は、学ぶとは「覚るなり、惑いを弁えて覚りに至るの義なり」と述べています。惑いがあるから覚れるのです。覚るまで自己実現に挑むのです。挑む力が管理力です。

山中の賊を破るは易く、心中の賊を破るは難し

中江藤樹は「学問の目的は覚ることにある」と喝破しています。幹部がもっと学び自己実現していき、人間的魅力を引き出していけば、部下も育ち生産性も上がるのです。うまくいかない理由は、上司として人間的魅力を磨いていないからなのです。

陽明学は基本的に、人間は誰もが良知(仁・義・礼・智)を持っている、と考えます。では、なぜ人間は本来持っている仁や義、礼、智が発揮されないのか。中江藤樹は「致良知」(良知を磨いて行動する)という修行眼目をおいて実践しなさい、と述べています。有名な「五事(貌・言・視・聴・思)を正す」です。経営幹部として実践すれば、部下はその姿に触発されて、自ずから自己成長意欲を持つのです。

私は、体験学習としての可能思考教育を行っていますが、最大目的は、人間の持つ「良知」に気づき、それぞれの人間的魅力を引き出していくことです。模範解答に酔って、「自分はできている」、あるいは「これでいい」など、その錯や安住こそ、人間の最大の敵なのです。陽明学の祖である王陽は、政治家、軍人、聖学の人です。

当時の明王朝は、内にあっては腐敗した官僚が、国の未来や民の苦しみを考えず、自分たちだけの思惑で権力を行使し、それは財政の逼迫をまねき、非常に憂うべきものでした。陽明も宦官の劉瑾という時の権力者に迫害されます。

外にあっては、地方に反乱軍が続出し、それに乗じて夷狄が国境沿いに侵入します。次々に鎮圧した陽明は、「山中の賊を破るは易く、心中の賊を破るは難し」の言葉を残しているのです。

「覚り」とは惑いの原因を自覚することから始まる

「人間は誰もが惑いを持つ」と、中江藤樹は述べています。私も禅修行をし、書物を読み、多くの研修に参加しました。悩み惑うから学ぶのです。起業して50年になりますが、いまだに悩み惑うときがしばしばあります。道元禅の師・田里亦無先生には、「惑いや苦悩と覚りは紙一重」と教えられました。悩みは道を求めている証しなのです。なぜなら、それを自覚することが大事だからです。人間的魅力を強く感じる人は、自分の惑いや悩みを自覚して、それを乗り越えようと生きています。世に「ぼんぼん」や「お坊ちゃん」という言葉がありますが、蔑称です。悩むことも、惑うことも、すべて周囲に片づけてもらう生き方で、己を生きていないのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2019年6月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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