企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

「民のかまど」に象徴される精神文化は消えてしまうのか

昭和と平成の時代の苦難を乗り越えた先人に対して、われわれは自らの襟りを正すべきだと思います。新しい時代を迎えて、次世代に伝えたいこと、守るべきことは何かを問う良い機会にするべきです。

各界の陋習は革新していかなければならない

日本の神話で、仁徳天皇の治世のエピソードとして「民のかまどの話」は有名です。人の上に立つ治世者のあるべき姿・理想像として語り継がれてきました。

ご退位される今上天皇・美智子皇后陛下のお言葉は、仁徳天皇の御心にも通じます。仁徳天皇の高貴さを偲ぶエピソードにふさわしく、「高き屋にのぼりて見れば煙立つ民のかまどはにぎはひにけり」という和歌として読まれています。

仁徳天皇が高台に登ってみると、人家の「かまど」から炊煙が立ち上っていないことに気づかれました。そこで租税を免除し、民の生活が豊かになるまでは、お食事も着るものも倹約され、さらに、宮殿の屋根の茅さえ葺き替えなかったのです。これが日本人の精神文化です。日本の指導者のあるべき姿を語るにふさわしいものです。

やがて、そうした仁徳天皇の仁愛が通じたのか、民は熱意を持って努力して働き、次第に豊かさを回復していきます。先の「かまどの歌」は、回復した喜びの御歌なのです。民の豊かさや貧困を感じ取るには、現地や現場を自分の目で見なければ判断できません。仁徳天皇も、今上天皇も肌感覚で国民感情を理解されていたのです。

平成の元号が変わりますが、この機会に教育界も、政界も、経済界も、国民全員が、より良き日本の精神文化や伝統は残し、各界が持つ陋習は革新していかなければいけません。

管理力とは、自社の陋習を改めて、働く人たちの喜びをつくることです。それだけに社長・幹部自身が自らを正して、日々新たにしていく必要があるのです。

末端の勤労統計調査員の発言は、”誇り”に満ちていた

私は昭和二〇年の戦後生まれです。懐古主義と批判を受けることを厭わずあえて言うなら、私を含めて、先人の困難の上にぶら下がって生きている人が多くなった気がします。次世代に何を伝え、何を守っていかなければならないか、多くの国民がこの国を心配しています。特に厚生労働省の毎月勤労統計の不正調査が波紋を広げています。基幹統計の22の不適切も指摘されています。日本の大事な統計調査の虚偽が長年行われていたとは、道義国家としての矜持を持つ国民の一人として、度を過ぎたものと言わざるを得ません。上層指導者のリーダーシップ不足です。

本記事は、月刊『理念と経営』2019年4月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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