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京セラ株式会社 伊藤 謙介 氏

京セラ株式会社 伊藤 謙介 氏

京セラの創業者・稲盛 和夫名誉会長は、かつて「たとえ普通の技術であっても、普通ではない結果を出す。これが京セラの強さだ」と語った。では、その強さはどのようにして築かれてきたのか。創業時から稲盛氏を支えてきた伊藤相談役を迎えて、経営戦略の第一人者・加護野教授に、その答えを導き出していただいた。

___まず、伊藤相談役が「京セラ」に入られた経緯についてお話しいただけますか。

伊藤__高校を卒業して、本当は大学に行きたかったのですが、家庭が裕福ではなかったので、京都に出て、松風工業に就職しました。そこで、上司として出会ったのが稲盛です。
松風工業は碍子(絶縁体器具)メーカーで、競争相手の日本ガイシはグングン伸びていきましたが、松風工業は落ちこぼれて赤字が続き、そういう最悪のときに入社したのです。
稲盛は碍子だけでメシは食えないと、特殊磁器、つまり、ファインセラミックスの研究開発と製造をやっていましたが、技術的な問題をめぐって上司と意見が対立して辞め、独立して京都セラミック株式会社(現・京セラ)を興こしました。稲盛から「お前も来たら、どうか」と誘われ、私は稲盛を、技術的にも人格的にも非常に尊敬していましたから、二つ返事で従いました。

京セラ株式会社

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伊藤__「経営の目的は、技術屋の夢を実現することではない。社員やその家族の物心両面の幸福を実現することにあると気づいた」と、稲盛は言っています。 京セラフィロソフィは、稲盛の実体験がベースになっていますが、「人間として何が正しいか」を判断基準に、人間としての倫理観や社会的規範にしたがって、誰にも恥じることのない経営を行なっていくことの重要性を説いたものです。
その京セラフィロソフィを鑑みて、物の面では隆々とした会社をつくり経済的な安定と安心を図る。心の面では緊張感をもちつつも、やり甲斐のある仕事をし、豊かな人生を送るようにする。これが私たちの仕事です。

___京セラの強さは、現場の一人ひとりが創意工夫しながら仕事をしているところにあると思います。そういう力を引き出していくうえで、京セラらしいことといえば何ですか。

伊藤__「アメーバ経営」です。京セラは創業六年目には早くも200名強になり、急成長しました。しかし、組織が拡大し、製品や顧客が増えたことで、何が、どの組織が業績に貢献しているのか見えにくくなってきました。こうした課題を解消するために、部門別採算制度として「アメーバ経営」が稲盛によって考え出されたのです。
つまり、会社のビジネスをアメーバと呼ぶ小集団に細分化し、会社をそのアメーバの集合体として捉えます。一つのアメーバは10名ほどのグループで、そのリーダーが中小企業の経営者のように経営のかじを取ります。そして、すべてのアメーバにおいて「時間当り採算」という独自の経営指標の向上を目指します。その中では、リーダーのみならず社員一人ひとりが全力で創意工夫を図ります。
ですから、経営トップは細分化された組織ごとに業績をタイムリーに把握し、すぐに改善策を講じることができるし、社員は経営に対する参加意識が非常に高くなります。それが京セラを飛躍させた直接の要因だと思います。

京セラ株式会社

___私が初めて稲盛さんにお会いしたときに、「京セラという会社の強みはどこにあるのですか」と聞くと、こんなエピソードを紹介してくれました。
京セラは、実はアメリカの会社と競争して勝ち、その会社を買収した。その会社の社長に、「今後もこの会社の社長としてやっていってほしい。そのためには京セラ流の経営の仕方を見てもらう必要がある」と話し、日本に連れてきて、工場を見てもらった。
その社長は稲盛さんに、「おたくの工場を見てショックだった。どこを見ても何ら特別の技術はない。なぜ、うちはおたくに負けたんだろう」と正直に言った。それに対して、稲盛さんは「だから、負けたのです。我々に特別の技術があれば、それを超える技術を開発すれば勝てたはずです。京セラの強さは何ら特別なものはありません。
普通の技術で普通ではない結果を出す。これが京セラの強さです」と答えたというのです。
つまり、京セラの強さを常に維持していけるのは、社員一人ひとりの創意工夫と、トップの志があるからでしょうね。それ以外に重要なものはありますか。

伊藤__「黙の知」、これは、花王の元会長の常盤文克さんがおっしゃっていたことですが、組織内に潜む、目には見えない雰囲気、つまり、集団で生み出していく社風や企業文化、あるいは伝統です。
たとえば、つい先般も増収増益を続ける王将フードサービスの社長が、その強みの源泉はと聞かれて、「うちの強みはバランスシートを見てもわからない。バランスシートの奥にあるものが本当のうちの強みだ」とおっしゃっていました。結局、それは「黙の知」なんですね。
自慢のようで恐縮ですが、京セラでは、トップが「経費を10%下げよう」と言ったら、すぐに組織の末端まで伝わり、動き始めます。そういう集団をどうつくりあげるかが、経営の要諦ではないでしょうか。

___昔、アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)の人が「一番怖いのは、GEの理念を理解せずに業績を上げている連中だ。この連中はすぐにクビにしなければいけない」と言っていましたが、まさにそれですね。

伊藤__創業者の言うことを、まずは白紙の状態で素直に聞き、それを自分のものにしていくプロセスが大切です。だからこそ、私は創業者が朝礼や式典などで話したことをすべてビデオに収録して、それを会社の原点にしなければならないと考え、社内で努め、社外の方にもお勧めしています。
また、経営者は自分を磨いていかなければなりません。どんな小さい会社でも、経営者が素晴らしい人物でなければ、100人、200人の社員を従えて収益を上げることはできません。そのために、リーダーたる者は素晴らしい絵画を見たり、オペラや音楽を鑑賞したり、芸術や文化に接することで、少しでも人間の幅を広げていきたいものです。そうでなければ、社員はついてこないのではないでしょうか。

伊藤 謙介 氏

京セラ株式会社

伊藤 謙介 氏

1937年(昭12)岡山県生まれ。59年(昭34)京都セラミック(現・京セ ラ)の創業に参加。主に開発・製造畑を歩み、1989年(平元)社長、その後、会長を経て現職。経営の第一線を退いた後、各紙誌に寄稿。趣味は読書、美術鑑賞。著書に『心に吹く風』『リーダーの魂』(文源庫)、『挫けない力』(PHP研究所)などが

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